粘膜ワクチンは全身のみならず、粘膜組織に免疫誘導できることから理想的な感染症ワクチンである。申請者はこれまでに鼻腔関連リンパ組織 (NALT)上皮細胞上にclaudin-4が高発現しており、ウエルシュ菌毒素C末断片であるC-CPEと肺炎球菌ワクチン抗原であるPspAとの融合体 (PspA-C-CPE)を用いることにより効率的にワクチンを送達できることを報告している。しかしながら、投与組織である鼻腔には粘液などの物理的バリアが存在し、経鼻ワクチンもまた影響を受けている可能性がある。本申請課題ではC-CPEを用いたclaudin-4指向性経鼻ワクチンを用いて鼻腔物理的バリアが経鼻ワクチンに与える免疫学的影響を検証した。 初年度までに、鼻腔繊毛運動異常に伴う粘液の貯留が認められるTtll1欠損マウスを用いた検証から、鼻粘液が過剰に貯留する場合、抗体のクラススイッチや親和性向上の場である胚中心形成異常に伴う粘膜免疫誘導が低下することを見出した。最終年度では粘液除去による粘膜免疫誘導を中心に検証した。粘液除去剤としてN-アセチルシステインをTtll1欠損マウスに経鼻投与したところ、少なくとも投与後30~60分はNALT周辺の粘液の除去が確認できた。また、PspA-C-CPEを投与したところ少なくとも投与後30分で上皮細胞への結合が認められた。そこで、N-アセチルシステインを投与し、その30分後にPspA-C-CPEを経鼻投与することで、粘液を除去することによる経鼻ワクチンへの影響を検証した。その結果、粘液除去したTtll1欠損マウスは正常マウスと比較して同等程度に胚中心B細胞および粘膜免疫の誘導が認められた。すなわち、過剰な粘液が貯留する場合にはあらかじめ粘液を除去するなどの考慮が必要であることを明らかとした。
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