研究課題/領域番号 |
15K18951
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
暮地本 宙己 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60632841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 実験内分泌学 / 電子顕微鏡 / 下垂体前葉 / 性腺刺激ホルモン産生細胞 / 小胞体関連分解 / オートファジー |
研究実績の概要 |
細胞内分解系はオートファジー系とユビキチン-プロテアソーム系(UPS)の2系統に大別される。本研究課題ではオートファジーとUPSの関係について形態学的観点から検討することを目的とし、実験内分泌学的動物モデルを用いて、細胞の生理機能変化と細胞内分解系関連分子局在の変化を対応づけながら解析を行っている。 これまでの研究で、ラット下垂体前葉の性腺刺激ホルモン(LH/FSH)産生細胞において、強くGnRH受容体が刺激されると、管状の小胞体が高密度に集積した構造(ER patch)が一過性に出現すること、ER patchにはBiPやカルネキシンなどの小胞体ストレス関連蛋白に加えて、HRD1やBap31などUPSと関係する小胞体関連分解機能分子が強く集積することが明らかとなっており、ER patchとUPSに関連性が示唆されていた。そこでER patchが出現したLH/FSH産生細胞の微細構造を詳細に電顕で観察したところ、細胞質を分画する多層膜構造体がER patchに隣接して出現していた。オートファジーの指標となるp62と、ER patchマーカーおよびLHによる多重蛍光標識切片の検討により、ER patchが出現したLH/FSH産生細胞でp62の細胞内蓄積がみられ、ER patchの出現とオートファジーにも相関性があることが示唆された。 これらの研究により得られた成果の一部は研究発表欄に記載した学会発表(日本解剖学会第61回東北・北海道連合支部学術集会、平成27年度公益社団法人日本顕微鏡学会北海道支部学術講演会、第121回日本解剖学会総会・全国学術集会)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の中で初年度に実施予定であった、実験内分泌学的操作による動物モデルの作出については、現在のところ浸透圧ポンプを用いてGnRHアゴニスト(酢酸リュープロレリン、ブセレリン)およびGnRHアンタゴニスト(アンチド)を投与したラットの各種標本作成が完了し、去勢後にエストロゲンやテストステロンを充填したシリコンチューブを移植したラット標本についても形態学的解析用標本を作成した。これらの実験標本については既に解析と検討を行っており、今年度も学会発表の形で成果を公表している。上記を踏まえて、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、GnRH受容体を強く刺激されたLH/FSH産生細胞内で出現するER patchとオートファジーの関連性について、電顕を用いた微細構造観察を完了するとともに、免疫組織化学を用いた関連機能分子の局在解析と、裏付けに必要な生化学的解析を進める。また今後の方針として、LH/FSH産生細胞のホルモン放出に直結するGnRH受容体刺激により上記所見が出現することに着目し、分泌顆粒や小胞の開口放出を行う点で類似性のある前立腺上皮細胞や、神経細胞に対する形態学的解析も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた英文校正や論文投稿および掲載料などの支出が年度をまたぐこととなったため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由に記載したように、論文に関する費用について支出する計画である。
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