研究課題/領域番号 |
15K18955
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茶屋 太郎 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (50747087)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繊毛 / キナーゼ / リン酸化 / 内耳 / 聴覚 / 平面内細胞極性 |
研究実績の概要 |
蛋白質リン酸化による繊毛形成制御の生理学的意義を明らかにするために、以前私たちが繊毛内輸送を制御することを明らかにしたセリン・スレオニンキナーゼICKが欠損したマウスを用いてICKの内耳有毛細胞での機能解析を行った。 まず免疫組織化学染色により内耳有毛細胞においてICKの欠損による平面内細胞極性因子Vangl2やDvl2などの細胞内局在を調べたところ、コントロールマウスと比較してこれらの因子の局在に明らかな変化は認められなかった。ICK欠損マウスは新生児致死となり成体マウスでの解析ができないため、ICK floxマウスと内耳有毛細胞でCreを発現するPax2-Creトランスジェニックマウスを掛け合わせた。このマウスにおいてもICK欠損マウスと同様に免疫組織化学的解析や走査型電子顕微鏡を用いた解析により、有毛細胞において動毛の根本と不動毛の位置関係がずれているものが存在し、不動毛の配置も乱れていることを見出した。このコンディショナルノックアウトマウスを用いて聴性脳幹反応(ABR)を測定したところ聴力の低下が認められた。これらの結果から蛋白質リン酸化による繊毛内輸送が内耳有毛細胞の不動毛の形成と正常な聴覚機能獲得に必要である可能性が示唆された。 今後は、ICKコンディショナルノックアウトマウスにおいて歪成分耳音響放射(DPOAE)を測定することによりICKの欠損が聴力に与える影響をより詳細に検討する。また、ICKの欠損による内耳有毛細胞での繊毛内輸送への影響を免疫組織化学染色、電子顕微鏡を用いて解析する予定である。本研究により、繊毛の形成や機能異常による難聴の発症メカニズムが明らかになり、治療法の開発へと繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、免疫組織化学染色を行って内耳有毛細胞においてICKの欠損による平面内細胞極性因子Vangl2やDvl2などの細胞内局在を調べた。また、内耳においてICKを欠損したマウスを作製し聴性脳幹反応(ABR)を測定したところ聴力の低下が認められた。これらの解析により、蛋白質リン酸化による繊毛形成制御の生理学的意義の解明が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、内耳においてICKが欠損したマウスの歪成分耳音響放射(DPOAE)を測定することによりICKの欠損が聴力に与える影響をより詳細に検討し、ICKの欠損による内耳有毛細胞での繊毛内輸送への影響を免疫組織化学染色、電子顕微鏡を用いて解析する予定である。
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