研究課題
ヒトの発生において胎生第8週末までに殆どの主要な器官の概形が形成され(器官形成期)、第9週以降から生後しばらくまで、臓器特異的な細胞分化と構築化による組織形成が続く。この組織形成には個体差が存在する。臓器の組織形成を促進することができれば臓器の予備能を高め、生活習慣病などの疾病発症を予防できると考え、ストレス応答や免疫・代謝・循環調節など多岐にわたり生体に影響するACTHの組織形成及び、成長後の疾病発症への影響を検討している。研究を開始した昨年度、胎生14日にJcl/ICRマウス母獣を開腹し、胎仔の背側皮下に下垂体ACTH産生腫瘍細胞株AtT20をガラスピペットを用いて注入、閉腹後発生を継続させた。出生した仔マウスは胎仔皮下にAtT20細胞株が結節を形成して生着し、注入群のACTH血中濃度はControl群の50倍以上と高値であったが生後7日以内に死亡し成長後の疾病発症を検討することができなかった。そのため、AtT20細胞の注入量及び注入時期を調整し、最終的に胎生17日に注入し、ACTH血中濃度がControl群の10~70倍のAtT20細胞注入群の仔マウスを得て、生後12週間まで長期生存させた。胎生18日、組織形成がほぼ終了する3週齢、成獣期12週齢のマウスの、Control群及びAtT20細胞注入群の組織(大脳・小脳・下垂体・肺・肝・腎・副腎・十二指腸・脂肪組織)及び血液を採取し、3週齢から45%高脂肪食を与えた12週齢のマウスの組織及び血液も採取した。また、12週齢のControl群及びAtT20細胞注入群のマウスにおいて、行動異常を検討するため明暗試験・オープンフィールド試験を行った。
2: おおむね順調に進展している
胎児期にAtT20細胞を注入し、血中ACTH濃度が上昇したマウスを12週齢まで生存させ、その組織及び血液を得て、行動実験を行うことができた。
本研究の遂行に当たり一番の手技的要件であるAtT20細胞株の胎仔皮下への生着と、注入後無事に胎仔を出生させ12週齢まで生存させることに成功した。次年度は得られた組織の組織学的な違いと、疾病発症について血液検査と行動実験の解析を行い、組織形成と成長後の疾病発症について検討する予定である。
本研究は3年計画であり、来年度計画していた研究を遂行するため。
今年度得られた組織の組織学的検討と、血液検査と行動実験による疾病発症の解析を行う。
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