研究課題/領域番号 |
15K18957
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
那須 信 熊本大学, その他の研究科, 助教 (80634790)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大脳 / バウンダリー / ES細胞 / 分化培養 / メカニズム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、三次元in vitro分化培養技術を用いて、大脳に形成されるバウンダリー(領域境界)の形成機構を明らかにすることである。平成27年度は、バウンダリーのin vitro分化誘導条件を検討すること、およびバウンダリーの可視化システムを構築することを目指した。 当初培養における不安定性が生じる問題が見られた。本研究では大脳神経細胞を再現性高く分化培養できることが前提となるが、神経系への分化や神経系に分化した細胞でも大脳への運命決定が不十分であることが観察されることがあった。このため安定性を高める条件を探索する必要が生じたが培養条件を再検討した結果、分化の初期段階におけるTGFbetaシグナルを抑制することによって大脳神経細胞を安定的に分化誘導できる条件を決定することができた。この条件を元にさらに、領域バウンダリーが効率よく形成される条件の検討を行い現在までに一定の成果を得ているが、分化の方向性や分化の早熟性への影響などについては検討が不十分であり、今後総合的な判断によって条件を定めていく方針である。 蛍光タンパク質マーカーによってバウンダリーを可視化し、条件検討の効率化とその後の解析に利用することも本年の計画の一つであったが、プラスミド構築の過程で遅れが生じている。一方、シグナル可視化システムを共同研究者とのMTAにより提供を受けた。個体解析用に構築されたプラスミドであったため、ES細胞を用いた自らの実験系に使えるように改変を施す必要があったが、現在までに改変は概ね完了し利用準備を整えるまで進めることができた。今後、シグナル可視化システムの完成とともに、バウンダリー形成条件の詳細な解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養環境の安定化に手間取ったこと、計画していたES細胞の利用が困難であったことから代替案を採用したことで時間と労力を要したこと、プラスミド構築のいくつかのステップで遅れが生じたことなどの理由により研究全体の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、in vitro分化培養条件の詳細な検討を行い、研究対象とする大脳の領域バウンダリーの形成と維持に与る因子を明らかにすることを目指す。バウンダリーを構成する細胞の特性と動態を把握しながら、蛍光タンパク質マーカーを用いて定量的な解釈を与えることが最終目標である。
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