平成28年度までに、CPEB1がFMR1の発現を抑制する事が明らかになっているため、平成29年度はCPEB1がFMR1発現における上流制御因子であると位置付けその制御機構を詳細に解析した。その結果、3’非翻訳領域を介したAuf1によるRNAの安定性制御によりCPEB1発現が抑制されている事が明らかとなった。さらにCPEB1タンパク質自身がCPEB1 mRNAに結合しその翻訳を抑制する事も明らかとなった。これらの結果から、Auf1/CPEB1/FMR1経路によるFMR1発現制御機構が新たに解明された。また、前年度までのマイクロアレイ解析とGene Ontology(GO)解析からCPEB1がミトコンドリア関連遺伝子群を抑制することが示唆されたため、平成29年度はミトコンドリア機能に関しても解析した。その結果、CPEB1発現抑制細胞においてATP合成関連遺伝子等の発現量上昇が確認されたが、一方で、アポトーシス関連遺伝子の発現上昇も確認され発現量変化によるミトコンドリア機能の推測は困難であると判断した。ミトコンドリア機能を直接解析するために酸素消費速度(OCR)を測定したところCPEB1発現抑制細胞においてOCRの低下が確認された。CPEB1/FMR1 2者発現抑制時での機能解析が重要であると考えられるが研究期間内におこなうことはできなかった。本計画では脆弱X症候群病態解明と新規治療標的同定が最終目標であったが、研究期間において新規FMR1発現制御経路が明らかとなり、脆弱X症候群におけるミトコンドリアの関与が示唆された。本研究成果に加え、海外グループも脆弱X症候群のDrosophilaモデルにおいてdFMR1がミトコンドリア機能を制御することを最近報告している。すなわち、ミトコンドリア機能向上による脆弱X症候群病態改善の検討が重要であると考えられる。
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