研究課題
足細胞の高度な突起構造は糸球体濾過バリアの形成に重要な役割を果たしている。この突起構造は発生初期の単純な細胞から形成され、病態時には退縮し扁平な突起に再構築されることが知られている。しかし、足細胞の複雑性や培養下で突起構造が再現されない等の理由から、突起の形成・退縮がどういった形態的プロセスを経て進行するのかは不明なままである。本年度は連続SEM断面観察法(FIB/SEM法)を活用し、主として発生期における足細胞の突起形成の形態的プロセスを明らかにした。糸球体発生の初期段階では、足細胞はタイト結合(TJ)やアドヘレンス結合(AJ)で連結された円柱上皮を成している。既にこの段階で、隣接する細胞間で細い突起(原始足突起 primitive foot processesと仮称)による噛み合い構造が形成されていた。ただし、前足突起間にはスリット膜を含む細胞間結合装置はほとんど見られなかった。さらに発生が進むと、足細胞は互いに一次突起を伸ばして組み合うようになる。伸び出しつつある一次突起の辺縁からは前足突起が出ているのだが、前足突起間にタイト結合とアドヘレンス結合が新たに形成されることで前足突起は未熟足突起(immature foot processes)となる。未熟足突起間の結合装置は最終的にスリット膜に置き換わることでスリット間隙が形成され、未熟足突起は成熟足突起となる。
1: 当初の計画以上に進展している
連続SEM断面観察法による撮影を当初は学外の研究機関で実施することを予定していたが、平成27年5月に本学にHelios NanoLab 610 FIB/SEMが新規に導入され、これを利用することで短期間に極めて効率よくデータを取得できたため。足細胞の突起形成過程に関するデータは現時点で原著論文として投稿中であり、突起退縮過程に関してもデータ取得・解析が効率よく進行している。
データ取得のさらなる効率化を目指し、撮影方法の改良を順次進めている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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