研究課題/領域番号 |
15K18961
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
曽 友深 順天堂大学, 医学部, 助教 (60576221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GPHR / ゴルジ体 / pH / 神経変性 |
研究実績の概要 |
酸性オルガネラは内腔を固有のpHに維持しており、そのpH調整の破綻が様々な重篤な疾患を引き起こす原因である事が明らかにされつつある。しかしながら、これまでの先行研究において、酸性オルガネラの1つであるゴルジ体に関する報告は非常に稀であった。その原因として、ゴルジ体のみの機能を特異的に欠損させる方法が皆無であったことが挙げられる。しかしながら、近年同定されたゴルジ体に局在するイオンチャネルであるGPHRの欠損はゴルジ体内腔のpH上昇に起因するゴルジ体の機能異常を引き起こすことが報告された。そこで、本研究課題では組織特異的条件付きGPHR欠損マウスを作製し、ゴルジ体の機能異常と病態発症、特に神経変性疾患との因果関係の解明を目指した。 作製した中枢神経系特異的GPHR欠損マウスは野生型マウスと比較し有意に小さく、振戦症状を呈し、生後13日に死亡した。死亡する直前の生後12日の中枢神経系特異的GPHR欠損マウス脳では、大脳皮質における錐体細胞層や海馬CA1の神経細胞の脱落が観察され、大脳皮質ではTUNEL陽性細胞の集積が観察された。つまり、中枢神経系特異的GPHR欠損マウスは神経変性疾患様症状を呈する事が明らかとなった。そして、錐体細胞内のゴルジ体の構造をゴルジ体マーカーであるGM130とTGN38で組織染色した結果、ゴルジ体特有の層板構造が崩壊しており、電子顕微鏡解析ではゴルジ体がの断片化(小胞化)が観察された。これらの結果はゴルジ体の機能不全が神経細胞死を誘発し、神経変性疾患を引き起こす事が示唆している。しかしながら、ゴルジ体の機能異常が神経細胞死を引き起こすことが、その原因は未だに不明なままである。今後はゴルジ体の機能不全と神経細胞死との因果関係を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進行中の研究課題において、昨年度までにゴルジ体の機能不全が神経細胞死を引き起こすことを示唆する結果を得られた。そして、昨年度に作製を開始した小脳プルキンエ細胞特異的GPHR欠損マウスの解析を既に開始している。 また、一方で、細胞レベルの解析に必要なアデノウィルスベクターなどをほぼ作り終えている。今後は初代培養法によるGPHR欠損マウス由来の神経細胞を用いて細胞生物学的解析を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
ゴルジ体の機能不全に起因する神経細胞死および神経変性疾患様症状の発症機序を解明するために、小脳プルキンエ細胞特異的GPHR欠損マウスを解析中である。この欠損マウス解析では単一な神経細胞の解析が可能となり、細胞自律性神経細胞死であるかどうかの判断が可能となる。また、ロタロッドやフットプリントなどの個体レベルの解析から運動失調障害や振戦運動の有無を明らかにする。 一方で、細胞外マトリックスの形成には細胞外輸送の起点となるゴルジ体の機能が必須であり、神経細胞では細胞外マトリックスが神経細胞特有構造である特有のペリニューロナルネットを構成している。そこで、初代神経培養法を用いて、GPHR欠損神経細胞を樹立し、ペリニューロナルネット形成を解析することで、その存在意義を明らかにすることが可能になると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目に抗体作製を発注したが、納期が2年目にずれ込んでしまった。そのために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
発注し、納期がずれ込んだ抗体は既に納品済みであり、生じた次年度使用額はその予算に組込む予定である。
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