研究課題/領域番号 |
15K18961
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
曽 友深 順天堂大学, 医学部, 助教 (60576221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / GPHR / 酸性環境 / 神経変性 |
研究実績の概要 |
本年度は小脳プルキンエ細胞特異的GPHR欠損マウス(以下GPHR flox/flox GluD2)の解析に取り組んだ。GPHR flox/flox GluD2の個体レベルの解析から生後60日ほどで協調運動障害が発症することが明らかになった。そして、GPHR flox/flox GluD2小脳の形態学的解析から、生後60日ほどで、プルキンエ細胞の変性脱落が確認され、生後120日には全てのプルキンエ細胞が脱落していた。そして、ゴルジ体マーカーGM130の組織染色の結果から、GPHR flox/flox GluD2の脱落前プルキンエ細胞では、核周辺に存在するはずのゴルジ体が断片化し、樹状突起に入り込んでいた。これらの結果から、ゴルジ体の異所性と形態変化が神経変性と密接に関連していることを示唆している。 そこで、変性要因の探求のため、脱落前プルキンエ細胞の形態学的に解析に着手した。その結果、プルキンエ細胞の軸索基部に観察されるピンスゥ構造の欠除が明らかとなった。このことは分子層のバスケット細胞からプルキンエ細胞の細胞体へのシナプスの欠除が考えられる。実際に、抗vGAT抗体を用いたGABA陽性シナプス小胞の組織染色では、野生型では観察されるプルキンエ細胞周辺のvGAT陽性小胞がGPHR flox/flox GluD2では消失していた。さらに、電子顕微鏡解析から、変性前のプルキンエ細胞の細胞体シナプスの脱落が観察され、脱落したシナプス間隙にはグリア細胞の侵入が確認された。一方で、GPHR flox/flox GluD2の変性前プルキンエ細胞ではAMPA受容体の局在や興奮性シナプスの形態学的異常は見られなかった。これらの結果は、プルキンエ細胞への抑制的入力の欠除に起因して神経細胞死が引き起こされる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のGluD2-Creマウスではバスケット細胞においてもCreが発現している可能性があることを示唆する報告がある。よって、バスケット細胞の変性がプルキンエ細胞の細胞体シナプスの欠除の原因である可能性を否定できない。そこで、確立されたL7/PcP2-Creマウスを用いて、小脳プルキンエ細胞特異的にGPHRを欠損させ、GPHR flox/flox GluD2との比較研究を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ゴルジ体の酸性環境の破綻が神経細胞死を引き起こすことを示唆する結果を得てきたが、その分子メカニズムは不明なままである。今後はゴルジ体の主要機能である小胞輸送とその関連分子の動態をGPHR欠損マウスおよび細胞で解析する。具体的には小胞輸送の主要分子である低分子量Rab GTPaseファミリーやそのエフェクター分子の動態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに L7/PcP2-Creマウスと交配し、GPHR flox/flox L7/PcP2マウスの解析が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にGPHR flox/flox L7/PcP2マウスを解析するために用いる。 また、上記マウスの解析結果を含めた研究成果をまとめた学術論文の投稿費用として用いる。
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