研究課題/領域番号 |
15K18963
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
竹谷 浩介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20586862)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 平滑筋 / 毛様体筋 / ミオシン / キナーゼ / ホスファターゼ / リン酸化定量法 / Phos-tag |
研究実績の概要 |
毛様体筋は眼の遠近調節に関わる平滑筋で、素早い収縮応答と、それに引き続く持続的な収縮というユニークな収縮特性を持っている。これまでの研究により毛様体筋のカルバコール刺激に依る収縮には他の平滑筋と同じように細胞内のCa2+濃度の上昇が重要な役割を果たしていることが知られているが、その下流のシグナル伝達経路についてはいまだ不明な点が多い。本研究ではそのシグナル伝達経路の解明を目指しミオシン軽鎖LC20のリン酸化を手掛かりに解析を試みたが、予想に反してLC20のリン酸化状態がカルバコール刺激の有無、すなわち収縮・弛緩に依らず一定のレベルに保たれていることが判明した。この結果は毛様体筋収縮・弛緩の調節にミオシンのリン酸化・脱リン酸化を介さない別のCa2+依存性機序が関わっている可能性を示唆している。この未知のCa2+依存性機序の関与を明らかにするためβ-escinにより細胞膜に透過処理を施した毛様体筋でCa2+依存性収縮を観察したところ、Ca2+依存性のミオシンのリン酸化の増加が弱いながらも見られた。一方、イオノマイシンによりCa2+イオンに対する選択的な透過処理を施した毛様体筋ではCa2+依存的なミオシンのリン酸化の増加が見られなかったことから、β-escin処理毛様体筋ではミオシンのリン酸化を安定化させる因子が失われた可能性が示唆された。ホスファターゼ阻害剤であるオカダ酸を用いた検討では、イオノマイシン処理で収縮させた毛様体筋に1 μM程度のオカダ酸を加えると毛様体筋は弛緩した。この際、ミオシンのリン酸化状態は変わらなかったことからミオシン以外にリン酸化依存的に収縮を引き起こす因子がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウシ毛様体筋はカルバコール刺激時の収縮・弛緩に伴うミオシンのリン酸化の顕著な変化が見られない。一方、いくつかのキナーゼ阻害剤によりカルバコール刺激誘導性収縮が抑制されることからミオシン以外のリン酸化依存性収縮調節因子の関与が示唆されていた。当初計画ではこのミオシン以外のリン酸化依存性調節因子の同定を試みる予定であったが、まだ同定には至っていない。毛様体筋には平滑筋以外の細胞が不均一に入り込んでいるため、平滑筋由来のシグナルが見えにくくなっている可能性がある。平滑筋細胞を分離することにより打開を図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように当初予定していたミオシン以外のリン酸化依存性調節因子の探索は不均一な毛様体筋の特性によりうまく進んでいない。そこで、これを打開するため毛様体筋をここの細胞にばらして、平滑筋細胞を分離した条件で探索を行うことを計画している。また、網羅的な手法ではなく、他の平滑筋で既知となっているリン酸化依存性調節因子に焦点を絞って、これらの因子のリン酸化状態の変化を追跡することも検討する。 また、毛様体筋の平滑筋ミオシンと非筋ミオシンの分離を行い、それぞれのLC20のリン酸化定量を行う。これにより毛様体筋収縮・弛緩において本当にリン酸化非依存的な調節が行われているかを検討する。そのために等尺性張力測定中に急速凍結固定した筋切片を用いて、等電点電気泳動により平滑筋ミオシンLC20と非筋ミオシンLC20を分離したのち、Phos-tag電気泳動によりリン酸化バンドと非リン酸化バンドを分離定量する。
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