本年度は、前年度に行なうことが出来なかった一部の内容を補完するとともに、力学応答メカニズムの分子機構の詳細について解析を行った。その過程で予想外の結果が得られたため、研究計画の一部を見直して研究を進めた。 私が注目している転写コファクターについて、前年度に樹立したコンディショナルKOマウスを用いて、TAC手術によって心臓に負荷をかける実験を行い、その結果の解析を行った。またこのコファクターのノックアウトは、これまで胎生致死であると考えられていたが、マウスのバックグラウンドによっては、胎生致死とならずに、生まれてくることがわかった。また、生まれてきたノックアウト個体は、同腹仔と比較すると体の大きさが小さい。そこで、当初の予定にはなかった筋骨格系での異常についても、切片や骨格標本を用いて解析を行っているところである。 また、細胞質-核シャトリングの分子メカニズムを明らかにするために、力学刺激を負荷しながらリアルタイムに観察できるシステムを作成した。アデノウイルスなどによってGFP融合タンパク質として発現させ、観察したところ、これまで考えていた以上に迅速に核内に移行することが分かった。この迅速な核内移行を引き起こすメカニズム調べるため、様々な薬剤を用いて解析したところ、この転写コファクターは細胞内カルシウム濃度の上昇に敏感に応答することが分かった。このような研究当初には予想していなかった結果が得られたため、細胞内カルシウムとこの転写因子との関係を様々な方法を用いて解析した。その結果、この転写コファクターには、カルシウムは直接結合しないが、カルモジュリンが結合しうることが分かった。 また標的遺伝子の一部についても、同定することができたため、その標的遺伝子のKOゼブラフィッシュを作成した。さらに、マウスについてもノックアウトを作成中である。 以上の成果について、学会等での発表を行った。
|