現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規睡眠関連遺伝子DRLの発現を検出する方法として、ViewRNA ISH法と呼ばれる感度の高い特殊なin situハイブリダイゼーション法をaffymetrix社より導入し、野生型成獣雄マウス脳の前額断切片を吻側より尾側へ一定距離ごとに採用しサンプルとして用い、DRL遺伝子発現細胞の神経領域内分布について同定することを試みた。その結果、当初予想していた限局的な発現ではなく、意外なことに嗅球、大脳皮質および海馬、視床や視床下部を含む間脳領域、中脳、小脳、脳幹橋、延髄、脊髄などの、中枢神経系に該当するほとんどすべての領域で、その強弱はあるものの発現している様子がみられた。しかしながら、それらの中でも特に、記憶に深い関連がある海馬のCA1・CA3・歯状回(dentate gyrus)における顆粒細胞層、情動行動に関わる扁桃体(Amygdala)や手綱核(Habenular nucleus)、睡眠や概日リズム形成に関わる神経領域である視交叉上核(SCN)、全身の恒常性制御に関与する視床下部の亜核である室傍核(PVN)や腹内側核(VMH)や弓状核(Arc)、呼吸中枢として知られる吻側腹外延髄のretrotrapezoid nucleus(RTN)などの領域で強い発現がみられた。これらのDRL遺伝子の強い発現が確認された領域の中でも、手綱核や海馬はレム睡眠時のシータリズムの出現に関与することが報告されており(Aizawa et al, The Journal of Neuroscience, 2013)、また背側脳幹橋の一部のニューロンはレム睡眠の制御に関与することが報告されている(Hayashi et al., Science, 2015)。加えて、二重in situ法により、DRL発現神経細胞には興奮性のものや抑制性のものがあることがわかった。 以上より、レム睡眠減少の原因遺伝子DRLの発現パターンについて、成体期マウスにおける詳細な全脳的マップが得られたことにより、本年度の研究実施計画における当初の目的は達成できた。
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