研究実績の概要 |
<平成28年度研究実績の概要> レム睡眠異常をもたらす新規睡眠関連遺伝子Nalcnの生理学的機能の解析 Dreamless変異マウスはレム睡眠の「24時間あたりの平均時間」および「一回あたりの平均時間」に顕著な短縮を呈する。前年度には、原因遺伝子Nalcn(Sodium Leak Channel, Non-Selective)および遺伝子変異部位を同定、CRISPR/Cas9システムを用いてNalcn遺伝子特異的に変異を導入することでDreamlessマウスの再現を試み、同様の表現型を示したことでこれに成功した。さらにNalcn遺伝子について、睡眠制御に関わる神経回路において発現しているかを調べるため、中枢神経系におけるNalcn遺伝子発現細胞の分布について解析を行い、Nalcn遺伝子がレム睡眠に関連する神経領域のみならず、脳の広範囲に渡って発現することが明らかとなった。 次に、Nalcn遺伝子に見出されたDremaless変異が膜イオンチャネルタンパクとしての機能にどう影響を与えるのかを調べるため、HEK293培養細胞への強制発現を行い電気生理学的性質について調べた。また、Nalcn遺伝子がレム睡眠を制御する神経回路において機能しているのかを調べるため、レム睡眠の終止に関与する神経細胞を含む深部中脳核領域において、Dreamless変異が神経細胞の電気生理学的な性質に影響を及ぼすか調べた。また、Nalcn遺伝子について脳部位特異的遺伝子欠損をおこなうため、コンディショナルノックアウトアリル(Nalcn-flox)を作成した。これらにより、Nalcn遺伝子のレム睡眠量への寄与について検討し、レム睡眠を制御することが知られている神経回路において我々が見出したNalcn遺伝子変異が与える影響について調べることで、正常なNalcn発現細胞がいかに働くかを明らかにしようと試みた。
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