損傷を受けた骨格筋は、筋組織の幹細胞である衛星細胞(SCs: satellite cells)が筋芽細胞に分化し、筋芽細胞が融合し筋管へと成熟することによって修復される。筋損傷時の衛星細胞の活性化(増殖、運動能の亢進、生存、分化誘導)は筋芽細胞分化に重要であり、また周囲の微小環境(マクロファージ等)はこの活性化を支持しているが、衛星細胞と微小環境の相互作用を介したSCsの活性化制御の分化機構はいまだ不明な点が多い、我々は、カルディオトキシン(CTX: cardiotoxin)により前脛骨筋に損傷を誘導したマウスモデルを用いて、損傷部位においてWnt5aの受容体のひとつであるRor1受容体チロシンキナーゼが衛星細胞に発現していることを見出し、SCsにおけるRor1の機能について解析した。その結果、in vivoおよびin vitro実験の結果から、Ror1は炎症性サイトカインTNF-α、IL-1βによって活性化されたNF-kB経路を介して発現が誘導され、SCsの増殖に関与していることが明らかとなった。さらに、衛星細胞特異的なRor1ノックアウトマウスを用いた筋損傷モデルの解析によって、損傷した骨格筋における衛星細胞の増殖にはRor1が必須であることが示唆された。以上の結果から、筋損傷時に産生された炎症性サイトカインTNF-α、IL-1βがSCsにおけるRor1の発現を誘導し、Ror1がSCsの増殖に関与していることが明らかとなった。
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