研究課題
ATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)は様々な細胞の代謝センサーであるが、KATPチャネル欠損マウス(本マウス)では本来KATPチャネルの発現がない脂肪組織でインスリン依存的糖取り込みが亢進していた。本研究では、KATPチャネルが脂肪組織インスリンシグナルを制御する分子メカニズムと生体でのシグナルネットワークの解明を目的としている。本年度は、本マウスの脂肪組織へのインスリン刺激により誘導される、Aktと未知タンパク質との結合を解析した。インスリン刺激したマウスから脂肪細胞を取得し、活性化Akt抗体を用いたウエスタンブロッティングに供したところ、本マウス脂肪細胞ではAktサイズから約20kDaほど上部(該当サイズ)に、未知のバンドが検出されることを確認した。活性化Aktと未知タンパク質との結合は、インスリン濃度依存的に増大した。この結合は、beta-mercaptoethanol存在下では消失した。活性化Akt抗体結合ビーズを用いた免疫沈降後、SDS-PAGEゲル上の該当サイズ箇所を抽出し、LC-MS/MSに供した。その結果、本マウスサンプル内にAkt2が検出された。このことから、該当サイズバンドは、抗体の非特異性によるものではなく、Akt2と未知タンパク質との複合体であることが強く示唆された。現在、その候補タンパク質として、14-3-3タンパク質ファミリー等がリストアップされている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、活性化Aktと結合する未知タンパク質の同定と機能解析を課題としていた。未知タンパク質の同定のために、様々な条件でのSDS-PAGEを行い、候補として14-3-3タンパク質ファミリーを見出した。また、該当サイズとは異なるものの、これまでAktとの直接的な結合が報告されてこなかった様々なタンパク質をリストアップされ、新たな研究の展開を期待させた。以上から、本研究課題はおおむね順調に進行していると言える。
来年度は、各種抗体等を用いて、ターゲットであるAkt結合未知タンパク質を本年度の候補から同定する。該当がない場合は、脂肪組織のmRNA発現解析(RNAseq)から分子を同定する実験を行う。RNAseqについては、報告者所属の研究室に解析用機器(次世代シーケンサ)が稼働していることから、迅速にかつ安価で取り掛かることが可能である。同定されたタンパク質を各Aktおよび他のキナーゼと培養細胞内で発現させ、同定タンパク質とAktの特異的結合を解析する。同定タンパク質を過剰発現あるいはノックダウンさせた際のAkt以降のインスリンシグナルの変化を解析する。以上の実験から、AktとAkt結合タンパク質との相互作用様式ならびにその機能を明らかにする。
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