研究課題
ATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)は様々な細胞の代謝センサーであるが、KATPチャネル欠損マウス(本マウス)では本来KATPチャネルの発現がない脂肪組織でインスリン依存的糖取り込みが亢進していた。本研究では、KATPチャネルが脂肪組織インスリンシグナルを制御する分子メカニズムと生体でのシグナルネットワークの解明を目的としている。昨年度、活性化Akt抗体結合ビーズを用いた免疫沈降から、Akt2と14-3-3タンパク質ファミリーが見出された。ウエスタンブロッティングによる解析から、本マウス脂肪細胞では、Akt1よりもAkt2がインスリン刺激によりSer473ならびにThr384のリン酸化が誘導されること、すなわち本マウス脂肪細胞内インスリン応答にはAkt2が主に寄与することが示された。昨年度の免疫沈降ならびにマス解析を再実験した結果、14-3-3タンパク質ファミリーのうち14-3-3sigmaペプチドのみが検出された。しかし、結合サンプルのウエスタンブロッティング解析の結果、14-3-3sigmaはAkt2と複合体を形成していないことが示唆された。また、14-3-3以外の新たな候補として、Transkelotaseが見出されたが、ウエスタンブロッティングでは検出できなかった。インスリン非刺激状態での本マウス脂肪細胞をSDS-PAGEに供した結果、対照のC57BL/6Jと比較して、異なるバンド様式が観察された。このことから、本マウス脂肪細胞では、細胞内タンパク質の量比が大きく変化していることが示され、その変化がインスリン応答糖取り込み機構の差異に関与している可能性が示された。
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