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2015 年度 実施状況報告書

親和的接触刺激による社会行動促進作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K18978
研究機関自治医科大学

研究代表者

岡部 祥太  自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (00747256)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード撫でる / 接触刺激 / 親和的関係 / オキシトシン / 超音波 / ラット
研究実績の概要

「撫でる」などの親和的な接触刺激は他者との親和的な関係性の構築を促進し、不安行動を減少させ、社会行動を促進させると考えられる。しかし、その背景になる神経メカニズムについては明らかになっていない。そこで、ラットを用いた実験により、撫でる接触刺激が個体の情動や社会行動に及ぼす影響とその神経メカニズムについて調査した。
接触刺激を与えることで実験者に馴化したラットは不安行動が減少し、また、接触刺激を快刺激として嗜好するようになることを複数の行動テストバッテリーにより明らかにした。また、ラットの超音波発声は情動状態を反映する重要な指標になり得ることが報告されており、接触時におけるラット超音波の録音と解析を行った。その結果、接触刺激を与えた時にのみ快情動の指標となり得る50 kHz超音波をラットが発声すること、超音波を構成するシラブルが複雑化することが明らかになった。さらに、接触刺激により視床下部室傍核尾側領域のオキシトシン産生細胞が活性化することを明らかにした。このことより、視床下部室傍核尾側領域のオキシトシン産生細胞が不安の減弱や接触刺激に対する快情動の生起を制御している可能性が見出された。
本研究成果の一部はNeuroscience Letters誌に発表した。また、第42回日本神経内分泌学会, 第23回日本行動神経内分泌研究会合同学術集会及び科研費新学術領域研究「共感性の進化・神経基盤」第3回領域会議にて発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の大きな目標は接触刺激を与えたラットの情動を行動・神経レベルで測定可能な実験系の確立であった。そこで、接触刺激への反応性や不安行動を測定する複数の行動テストを組み合わせ、バッテリー化した実験系の構築を試みた。この行動テストバッテリーを用いた結果、実験者に馴化したラットは撫でるという接触刺激に対して、快情動を生起するとともに、不安行動が減少し、接触刺激を嗜好するようになることを明らかにすることができた。また、ラット超音波の安定的な測定・解析には高性能の超音波マイクや解析装置が必要になるが、これら機器の開発と導入、及び超音波の解析方法を確立することができた。
これら実験系は現在取り組んでいる、接触刺激による情動生起及び社会行動促進の背景にある神経メカニズムを調査する上で重要な基礎になる。初年度にこれら実験系を確立できたことで、今後の研究をさらに発展させる上での基盤を構築できたと言える。

今後の研究の推進方策

複数個体の超音波発声をモニターできるシステムの開発と導入を進め、円滑なシステム運用を試みる。これにより、実験進捗スピードを加速させる。また、接触刺激を与えることで活性化する視床下部室傍核尾側領域のオキシトシン産生細胞を破壊することで不安行動の減少や快情動の生起が阻害されるか確認する。これにより、オキシトシン産生細胞の機能を同定する。さらに、同定したオキシトシン産生細胞を基軸とする機能的神経ネットワークの同定を試みる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Structure and function of neonatal social communication in a genetic mouse model of autism2015

    • 著者名/発表者名
      Takahashi T, Okabe S, Broin P O, Nishi A, Ye K, Beckert M V, Izumi T, Machida A, Kang G, Abe S, Pena J L, Golden A, Kikusui T, Hiroi N
    • 雑誌名

      Molecular Psychiatry

      巻: - ページ: 1-7

    • DOI

      10.1038/mp.2015.190

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Noxious or Non-noxious Inputs to Oxytocin Neurons: Possible Roles in the Control of Behaviors2015

    • 著者名/発表者名
      Onaka T, Okabe S, Takayanagi Y, Yoshida M
    • 雑誌名

      Interdisciplinary Information Sciences

      巻: 21 ページ: 189-195

    • DOI

      10.4036/iis.2015.B.03

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Activation of hypothalamic oxytocin neurons following tactile stimuli in rats.2015

    • 著者名/発表者名
      Okabe S, Yoshida M, Takayanagi Y, Onaka T
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 600 ページ: 22-27

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2015.05.055

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] 接触刺激による快情動惹起の神経科学的メカニズム解明に向けて2016

    • 著者名/発表者名
      岡部祥太
    • 学会等名
      第8回農医連携セミナー
    • 発表場所
      茨城大学
    • 年月日
      2016-02-26
  • [学会発表] ラットは撫でられると喜ぶか?ー異種間における親和的関係性構築の神経機構会目に向けてー2016

    • 著者名/発表者名
      岡部祥太, 高柳友紀, 吉田匡秀, 尾仲達史
    • 学会等名
      科研費新学術領域研究「共感性の進化・神経基盤」第3回領域会議
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2016-01-30
  • [学会発表] 接触刺激に対するラット視床下部オキシトシン産生細胞の活性化と超音波発声2015

    • 著者名/発表者名
      岡部祥太, 吉田匡秀, 高柳友紀, 尾仲達史
    • 学会等名
      第42回日本神経内分泌学会, 第23回日本行動神経内分泌研究会合同学術集会
    • 発表場所
      仙台市戦災復興記念館
    • 年月日
      2015-09-18

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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