研究課題/領域番号 |
15K18982
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
岡田 俊彦 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70505924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸炎症 / 絶食・再摂食 / 乳酸 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにマウス絶食ー再摂食モデルにおいて、再摂食時に大腸上皮細胞回転の一過性亢進が起こり、これは乳酸菌が食物繊維を代謝して産生する乳酸に依存すること、発癌物質の暴露タイミングと摂食を協調操作することで、発癌のコントロールが出来ることを見出してきた。そこでこの知見に基づき、摂食コントロールによって大腸炎症が抑制できないかどうか検討を行った。 5週齡の雄C57BL/6JマウスにDSSで大腸炎を作成し、絶食ー再摂食させて炎症の回復程度を検証したところ、絶食ー再摂食群は非絶食群に比べて炎症からの回復が早く、非繊維食(ORS)で再摂食群させても回復は遅延した。続いてORSで再摂食させたマウスに酢酸、酪酸、乳酸の注腸を加えたところ、酢酸、乳酸のみが摂食依存性に炎症回復を促進させた。これらの結果から、発癌モデルと同様に食物繊維から産生される乳酸が絶食ー再摂食が誘導する炎症回復に重要であることが示唆される。実際にT-RFLP解析で腸内細菌叢を調べると通常食での絶食ー再摂食群では乳酸菌の比率が増加していた。さらに乳酸が炎症回復を促進するメカニズムについて栄養シグナル系に着目して検証すると、通常食での絶食ー再摂食群と乳酸注腸群でのみ、mTORシグナル系の下流分子の発現が抑制されていた。これらのことから、大腸炎の回復期に絶食ー再摂食を行うと、増殖した乳酸菌が食物繊維を代謝し産生された乳酸が、直接あるいは間接的に大腸上皮に作用し、炎症回復を促進している機構が働くことが推測される。現在さらなる分子生物学的な機構の解明に取り組んでいるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DSSによる大腸炎の作成にマウスの個体差が大きく、至適条件の決定に時間を要したため。 炎症性サイトカインの解析結果から栄養シグナル系の関与を推測するまでに、各種分子の解析を行う必要があり、これに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究系においても乳酸の関与が示唆される。注腸での乳酸投与実験に加えて、乳酸含有餌を作成し、投与実験を行う予定である。また、栄養シグナル系は下流でT細胞分化に関わっており、これが炎症を抑制している可能性があるため、大腸粘膜固有層に存在するT細胞を分離し、そのフェノタイプを解析する準備を進めている。最終的には初発の潰瘍性大腸炎患者における大腸粘膜での解析も目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に予定していた実験の進捗に若干の遅れが発生しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
各実験における動物、消耗品購入費、腸内細菌叢解析、学会発表や論文投稿にかかる諸経費に充てる。
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