研究実績の概要 |
本年度は、時間隔離実験により評価された概日リズム位相と習慣的睡眠スケジュールとの間の位相角差の程度と、抑うつ・気分状態との関連性について検証を行った。実験対象者は20~39歳の健常成人男性12名であり、実験初日までにクロノタイプ(MEQ、MCTQ)、睡眠習慣(PSQI・睡眠日誌・アクチグラフィ)、抑うつ尺度(CES-D、BDI、SDS)を実施した。時間隔離実験では唾液メラトニン濃度を定量した。3pg/mlを超えた時刻を個人のメラトニン分泌開始時刻(DLMO)とし、各睡眠習慣の各指標(入眠時刻・睡眠中央時刻・覚醒時刻)のそれぞれとの時間的間隔を位相角差として算出した。 BDIはPSQIにおける就床時刻、入眠時刻と有意に相関し(就床時刻:r=.689, p=.003、入眠時刻:r=.677, p=.003)、SDS・CES-Dはアクチグラフィにおける入眠時刻、睡眠中央時刻と有意な相関を示した(SDSと入眠時刻・睡眠中央時刻:それぞれr=.532, p=.018、CES-Dと入眠時刻・睡眠中央時刻:それぞれr=.509, p=.025)。しかし、DLMOと気分の各指標とは有意な関連は示されず、また、位相角差とも同様に関連はみられなかった。 気分状態に寄与する睡眠・生体リズム指標を同定することを目的として探索的なステップワイズ重回帰分析を行った結果、SDS, BDI, CES-Dと関連する指標は、それぞれアクチグラフィによる覚醒時刻(β=.756, p=.030)、MCTQでの平日の睡眠時間(β=-.731, p=.039)、アクチグラフィによる睡眠中央時刻(β=.841, p=.009)であった。 本研究の結果から、気分状態の低下は睡眠のタイミングと量に有意に関連するが、位相角差とは独立していることが示された。
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