研究課題/領域番号 |
15K18988
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足立 直子 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助教 (70604510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | β3アドレナリン受容体 / パルミトイル化 / GPCR |
研究実績の概要 |
パルミトイル化によるβ3アドレナリン受容体(β3受容体)の脱感作の新規メカニズムを提唱することを目的とし研究を進めている。さらにその結果を用いて、脂肪細胞における、β3受容体の脱パルミトイル化の制御が脂肪の分解・燃焼を促進させる可能性に着目し、その機構を標的とした創薬を目指している。今年度は同定したパルミトイル化修飾がβ3受容体の機能にどの様な影響を与えているのかについて、培養細胞を用いた基礎的な研究を進めた。
今回我々は、定常状態におけるβ3受容体のパルミトイル化修飾を解析をした。結果、β3受容体のC末端部位のシステイン残基(C361/363)にパルミトイル化が検出された。さらに、153番目と 292番目のシステイン残基もパルミトイル化修飾を受けることが判明し、β3受容体は少なくとも3箇所がパルミトイル化修飾を受けていることが分った。これらのパルミトイル化システイン残基をアラニンに置換し、非パルミトイル化受容体を作製し受容体の機能を検討したところ、C末端部位(C361/363)のパルミトイル化がcAMPの産生に重要な役割を担い、さらにはその下流のERKシグナルにも減弱がみられた。
次に、定常状態での代謝回転速度をタンパク質合成阻害薬(CHX)を加えて測定したところ、受容体の半減期は1.7時間程度であり、速い速度でβ3受容体は分解を受けていることが判明した。さらに、その分解にはプロテアソーム経路ではなく、リソソームが重要な役割を担っていることが分った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同定したパルミトイル化修飾の機能を検証し、各部位について機能を明らかにしつつある。また、刺激依存的なインターナリゼーションを起こさないβ3受容体の脱感作のメカニズムについて、そもそもの代謝回転が速くリソソームに輸送され、直接分解されていることが判明した。つまり、受容体の刺激依存性がなく、ユビキチンプロテアソーム経路に非依存的であった。一方で、β3受容体の質量分析解析により、これまで報告されていないその他の翻訳後修飾が次々と同定され、β3受容体の機能調節は、当初考えていたよりも複雑であることが判明した。
当初の計画にそってパルミトイル化修飾の解析は当初の計画通り進捗している。一方で、β3受容体の脱感作のメカニズムの研究については、当初予期していた結果と異なっておりパルミトイル化以外の翻訳後修飾を考慮する必要がでてきた。
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今後の研究の推進方策 |
当初は少なくとも3か所あるパルミトイル化部位を総合してβ3受容体の調節機能を検証していたが、各部位の果たす役割に違いがあることが判明したため、各部位ごとの検証を行う必要がある。また、質量分析によって新規に発見した各翻訳後修飾についても、脱感作の観点から解析を行っていく。これらの結果を元に、白色脂肪細胞を用いて、これらの翻訳後修飾がβ3受容体を介した脂肪の分解にどの様に影響を与えるのかについて検討を行い、脂肪の分解に対するβ3受容体の役割を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本テーマにおける学会発表を平成27年度には行わず平成28年度初頭(6月)にまわしたことより、旅費を使用する必要が無かった。また、高価な試薬が必要な実験を平成28年度に予定しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表のための旅費に加え、使用計画書通りの実験、さらには、外部委託によるDNAマイクロアレイの解析を予定している。
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