研究課題
β3アドレナリン受容体(β3AR)は脂肪組織や膀胱平滑筋に発現しているGPCRで、受容体の活性化により脂質の代謝や熱産生、平滑筋の弛緩を引き起こす。β3ARは多くのGPCRと異なり、リガンド結合後の受容体の内在化(インターナリゼーション)を起こさず、その脱感作の機構は不明である。本研究では以下の研究成果を得た。①パルミトイル化修飾は受容体半減期を変化させる;β3ARの4つのパルミトイル化修飾部位を同定し、また、パルミトイル化阻害薬2-BP処置によりβ3ARが急速にリソソームで分解されることを見出した。非パルミトイル化変異型受容体(β3AR-C4A)を用いて、2-BPの効果を検討したところ、β3AR-C4Aも2-BPの影響を受けることから、β3ARの結合タンパク質のパルミトイル化状態がβ3ARの分解に関与することが解った。一方で、野生型β3ARの半減期は1.7時間と短いのに対して、パルミトイル化修飾の数を減らすことで半減期に延長がみられた。つまり、β3ARはパルミトイル化状態の変化により、受容体の存在量が変化することが判明した。②パルミトイル化修飾はβ3ARの下流シグナルを制御する;野生型と比較してβ3AR-C4Aでは受容体刺激後のcAMPの産生量が低下した。4つの修飾部位の内、特に受容体のC末端領域のパルミトイル化修飾がGタンパク質との結合に必要であることが考えられた。また、cAMP/PKAの下流にあるERK1/2のリン酸化にも低下が見られ、パルミトイル化状態により、受容体の活性化状態が変化する可能性を示した。これらの結果より、β3ARは多くのGPCRとは異なるメカニズムで、受容体の発現量を調節し、下流シグナルを変化させることが判明した。今後はパルミトイル化状態を薬剤で変化させ、β3ARの発現量を調節し、脂質の代謝や熱産生、平滑筋の弛緩を制御することを目指している。
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