研究課題/領域番号 |
15K18990
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有岡 将基 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20733554)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GSK阻害薬 / 骨再生 / 破骨細胞 / 炎症 |
研究実績の概要 |
GSK3阻害薬の骨再生における促進作用の効果の検討を行っている。まず、破骨細胞に対する抑制効果および機序の解明を行っている。GSK3阻害薬の一つであるリチウムを用いてこれまで実験を行ってきたが、よりGSK3特異的な阻害薬であるSB216763とTideglusibを用いて研究を行った。いずれも、破骨細胞分化抑制効果を認めたが、SB216763の方がより強力に抑制することが分かった。これを用いて作用機序の解明を試みた。 破骨細胞は炎症性刺激により、分化が促進されえることが知られているため、GSK3と炎症に関する実験を行った。すると、GSK-3阻害薬はCOX2やmPEGS-1の抑制を介してPGE2の産生を抑制していることが分かった。こうした機序で破骨細胞は分化抑制されている可能性がある。 骨芽細胞へのSB216763とTideglusibの検討もSB216763の方が石灰化を促進する結果となった。 GSK3を操作することで、骨再生には良い効果をもたらしているが、同時にGSK3は生理活性に重要な役割を担うため、副作用や癌化のリスクも懸念しなければならない。こうしたことへの検討も同時に行った。 GSK3を活性化する薬剤では癌の増殖や転移を抑制できることから、GSK-3投与による癌化のリスクは否定できない。今後、強力なGSK-3阻害薬の骨への局所投与をすることで検討していく。 また、全身投与での効果も再度検討したところ、骨梁を増加させることはわかったが、尿崩症をきたすことが分かり、やはり局所投与への重要性を再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
破骨細胞の実験は細胞株だけでなく、初代培養でも検討を行った。その実験手技の確立、培養速度が遅いことなどにより、実験遂行に時間を要した。また、炎症とGSK-3との関与に着目し、検討したことで実験系が複雑になり、時間を要した。また、GSK-3の作用効果のみならず、安全性の検証をするために、癌との関与、全身投与の評価などをおこなったため、計画より多少遅れている。しかしながら、本年度より効果に対するin vivo実験に着手できることから、研究計画の遂行は加速していけると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroで検討した特異性や阻害機序の違うGSK-3阻害薬の効果を、生体内でも検証を行う。 雄11週齢のWistarラットの足を除毛・消毒(70%エタノール)し、三種混合麻酔薬 (塩酸メデトミジン 0.15 mg/kg; ミダゾラム 2 mg/kg; 酒石酸ブトルファノール 2.5 mg/kg) を腹腔内注射し、ラットの脛骨に骨欠損を作製する。BD マトリゲルTM 基底膜マトリックスを利用してGSK-3阻害薬の局所投与し、吸収性のコラーゲン膜で被覆する。ラットは術後14日後にセボフルレン吸入により安楽死させ、脛骨を摘出して解析を行う。 骨形態計測の解析にはmicro-CT Skyscan 1076 scannerを用いて、撮影条件は60 kV, 167 μA でスライス幅18 μm で行う。骨組織形態計測はVillanueva 骨染色により非脱灰標本を作製して行う。石灰化速度算出のため屠殺 5 日前と 1 日前に 2 %炭酸水素ナトリウムで溶解したカルセイン (10 mg/kg) を皮下注射する。 その後、異種骨、β-TCP、ハイドロキシアパタイトの併用効果を上記のプロトコールと併せて検討することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの実験が多く、細胞培養に関する実験器具や試薬の購入が多かった。次年度はこれまで同様に細胞培養に関する実験器具に加えて、ラットの購入や管理費に加えて、動物に投与するため、大量の試薬やコラーゲン膜、手術に関する器具などが必要になってくる。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
GSK-3阻害薬(SB216763およびTideglusib)の購入および、コーケンティッシュガイドというコラーゲン膜、ラットの骨評価を手術1週間後と2週間後に行い、それぞれに8匹ほどを検討している。そのため、コントロール群、リチウム群、SB216763群、Tideglusib群で64匹が必要となる。また、骨補填剤との併用の検討は異種骨、β-TCP、ハイドロキシアパタイトの3群で行うことから、それぞれ8匹ずつで24匹を検討している。
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