研究課題/領域番号 |
15K18992
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
細田 隆介 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20749428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイトファジー / SIRT1 / オートファジー |
研究実績の概要 |
本年度はまず骨格筋特異的SIRT1KO (SIRT1 smKO) マウスの表現型を野生型(WT)マウスと比較検討を行った。WTマウスと比較して、SIRT1 smKOマウスではハンギングテストにおけるつかまり時間の有意な短縮、トレッドミルテストにおける走行距離の有意な短縮が見られた。また運動後の血中Creatine kinase活性およびLactate dehydrogenase活性といった筋障害マーカーはWTマウスと比してSIRT1 smKOマウスで有意に高値であった。以上より、SIRT1 smKOマウスでは四肢の筋力および筋持久力が低下していること、そして運動時の筋障害が増強すると考えられた。これらの所見から骨格筋細胞におけるSIRT1は骨格筋の機能維持および障害抑制に重要な役割を果たすことが示された。 SIRT1 smKOマウスにおける筋力低下・筋持久力低下にマイトファジー活性化障害が関与するかどうかについて、まず絶食時に誘導されるマクロオートファジーについてWTマウスとSIRT1 smKOマウスで比較検討した。興味深いことに、WTで認めた骨格筋組織におけるオートファジーの指標であるLC3-IIの絶食によるタンパク量増加がSIRT1 smKOでは減弱していることを見出した。従って骨格筋においてSIRT1がマクロオートファジーの制御に関与している可能性が示された。今後この所見とマイトファジーとの関連についてさらに詳細に検討を行う予定である。 また筋芽細胞による培養細胞モデルを用いて、SIRT1とマイトファジーとの関連の検討を開始した。SIRT1活性化薬であるレスベラトロールの処置によりもたらされる細胞保護効果とマイトファジー関連因子との関連を、マイトファジー関連因子のノックダウンによる変化を評価することにより検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り平成27年度中にSIRT1 smKOマウスの骨格筋機能およびオートファジー活性化を評価することに成功している。また筋芽細胞を用いたin vitroの系での実験も始まっており、SIRT1とマイトファジーとの関連において良好な結果が得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本研究は順調に進行しており、今後も当初の計画通り実験を進める予定である。平成28年度は、SIRT1とマイトファジーおよびミトコンドリア保護との関連およびSIRT1による制御メカニズムを、SIRT1 smKOマウスやin vitroの系を用いて解明を行う予定である。主にmTORC1、AMPK、ULK1などのオートファジー活性化シグナルからの評価と、Pink-1、Parkin、Bnip3、LC3b、p62などのマイトファジー関連因子の遺伝子発現変化を確認する予定である。さらに、SIRT1の新規標的を同定するために、タンパク質量分析法によるSIRT1結合タンパク、脱アセチル化タンパクの網羅的同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の購入に際しメーカーの行っている割引などを効果的に利用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については試薬の購入に使用する予定である。
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