神経変性疾患の惹起要因として最も有力視されている酸化ストレスに対する防御機構にとって必須の内因性抗酸化物質グルタチオン調節因子の調節機構を明らかにすることは、神経変性疾患の新しい着眼による治療の理論的基盤となる。グルタチオン量の決定には、膜輸送体EAAC1とその負調節タンパク質GTRAP3-18が不可欠である。申請者は、これまでの研究よりこの2種類のタンパク質は同一のmicroRNAによって異なる様式で調節されている可能性を明らかにした。これまでの研究結果よりEAAC1及びGTRAP3-18におけるmiR96による異なる概日リズム制御は、GTRAP3-18の RNA結合タンパク質の介在による可能性が示唆された。本研究計画は、このRNA結合タンパク質を同定し、miR96結合阻害剤のスクリーニングをすることで、グルタチオン量及び神経保護作用を上昇させる新規薬物の探索と分子標的時間治療の確立を目指すものであった。 これを達成するためにまずGTRAP3-18に結合するRNA結合タンパク質の同定をマウス脳抽出液より分離精製磁気ビーズを用いて行った。質量分析よる予測スコア及びmiR96の標的配列予測スコアに恣意的な閾値を与える網羅的解析によりmiR96に制御されるGTRAP3-18結合タンパク質候補を得た(IF2B、NOVA1、VATB2、E41L3、KIF2A、AP2B1)。さらに、リポータージーンアッセイによる3’非翻訳領域解析及びドパミン作動性神経細胞のin vitroモデルを用いた遺伝子導入実験により、miR96により直接制御されるRNA結合タンパク質の同定を行った。
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