研究課題/領域番号 |
15K18996
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小堀 宅郎 近畿大学, 医学部, 助教 (60734697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マクロファージ / 血管新生 / 炎症性メディエーター |
研究実績の概要 |
・Interleukin (IL)-18は、主にマクロファージから分泌されて血管新生を促進するが、その詳細な機構は不明である。マクロファージは一般的に、M1/M2の二つのフェノタイプに分類され、M2型が血管新生を促進する一方、M1型はこれを抑制することが報告されている。これまでに我々は、IL-18がマクロファージのM2分化を増強することを見出してきた。そこで本年度は、IL-18がM2マクロファージによる血管新生作用へ及ぼす影響について検討した。 ・マウス由来単球細胞のRAW264.7細胞を用い、tumor necrosis factor (TNF)-αまたはIL-10 刺激によってM1/M2型マクロファージへとそれぞれ分化させた。細胞表面のM1マーカー (CD54、CD86、CD282) およびM2マーカー (CD163、CD204、CD206) 発現量は、flow cytometry で測定した。マクロファージの血管新生作用は、マウス由来血管内皮細胞のb.End5細胞との共培養による matrigel tube formation assay で解析した。 ・IL-10と IL-18 の併用刺激は、IL-10 単独刺激と比較して、RAW264.7細胞表面におけるCD163の発現量を有意に増加させた。一方、IL-18 の併用刺激は、TNF-α によるM1マーカーの発現増加作用に影響しなかった。さらに、IL-10 と IL-18 で刺激した RAW264.7 細胞と b.End5 細胞を共培養した結果、IL-10 単独刺激の場合と比較して、管腔面積および管腔長が有意に増加した。したがって、IL-18 はマクロファージの M2 分化を増強し、血管新生作用を促進する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、種々のメディエーターがマクロファージの M1/M2 分化ならびにそれらのマクロファージが血管新生へ及ぼす影響について解析する評価系を確立した。これによって、申請課題の HMGB-1 と同様に炎症性メディエーターである IL-18 が、マクロファージの M2 分化およびマクロファージを介した血管新生促進作用を示すことを見出した。同様の手法を用いることによって、HMGB-1 がマクロファージの M1/M2 分化ならびに血管新生へ及ぼす影響について解析を進めることができる。実際、RAW264.7 細胞を用いた検討において、HMGB-1 はマクロファージの M1/M2 分化を両方向性に増強する作用を持つことの示唆を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した実験評価系を用い、HMGB-1 がマクロファージの M1/M2 分化あるいは M1/M2 分化の増強機構のいずれに影響を及ぼすかについて、flow cytometry で解析する。同様に、HMGB-1 で分化させたマクロファージと血管内皮細胞を共培養し、管腔形成の変化を matrigel tube formation assay で評価する予定である。また、新たに in vivo 実験系として、担がんマウスの腫瘍周辺組織に集簇したマクロファージのフェノタイプの解析や HMGB-1 の発現・局在解析を進めたい。さらに、HMGB-1 の機能抑制あるいはマクロファージ分化機構への作用を抑制する因子の探索も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い、当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから、その知見を使用し十分な研究成果を得るために、当初の研究計画を変更する必要が生じた。これによりその調整に予想外の日数を要したため、平成 27 年度内に完了することが困難となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成 27 年度内に完了することが困難となった研究を平成 28 年度の早々に行う用意が整ったため、繰越額を当該研究に用いる予定である。
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