研究課題
本研究ではオートファジー関連低分子化合物であるクロロキン、メトホルミン等の標的分子を同定し、その分子の作用と化合物の関係を解明することを目的とする。平成28年度は27年度の継続であり、メトホルミン結合蛋白質MBPに関して重点的に研究を行った。TOF-MS解析の結果MBPはHMGB1であることが明らかとなった。HMGB1は炎症関連タンパク質であるアラーミンの代表的なものの1つである。HMGB1の遺伝子をクローニングし、その遺伝子組み換えタンパク質を昆虫細胞にて大量調製した。結合実験の結果HMGB1とメトホルミンの特異的結合が確認された。その結合はビグアナイド構造をもつフェンフォルミンによって阻害され、1級アミンを持つプトレシンおよび6-アミノヘキサン酸によっては阻害されなかったことからビグアナイド構造が結合に重要であることが明らかとなった。さらに、HMGB1のドメインごとの組換え蛋白質を昆虫細胞および大腸菌にて発現・精製してメトホルミンとの結合実験を行った結果、酸性アミノ酸に富むAcidic tailと呼ばれる領域に結合することが明らかとなった。メトホルミンはHMGB1による炎症惹起反応を細胞レベルでのin vitroおよびマウス個体レベルでのin vivoの両方で抑制することが明らかとなった。さらにアセトアミノフェン誘導肝障害を抗HMGB1抗体と同等に軽減させることも明らかとなった。本研究によりメトホルミンの抗炎症作用の標的因子の1つが明らかとなった。効果的な抗炎症薬の開発に寄与することが期待される。
すべて 2017
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J Biol Chem.
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10.1074/jbc.M116.769380