研究課題
新たに合成された細胞膜タンパク質は小胞体品質管理システムによって厳密に品質管理されており、正しいフォールディングや複合体形成に成功したものだけが小胞体からゴルジ体へと運搬される。しかしながら、立体構造が不完全なタンパク質や複合体形成に失敗した単体のタンパク質が小胞体からゴルジ体へと搬出されてしまう場合がある。これまでにわれわれは変異膜タンパク質を初期ゴルジから小胞体に送り返す第二の品質管理機構が存在し、その分子選別装置としてRer1が機能することを明らかにしてきた。一方、Rer1による細胞膜タンパク質の初期ゴルジ品質管理機構が、どのような生命機能に関与するかについては不明な点を多く残している。そこで本研究では、初期発生と高次脳機能におけるRer1の生理的役割に着目し、初期ゴルジ品質管理機構の生物学的意義を解明することを目的とし研究を行った。まずは、Rer1の初期胚発生における役割を解析するために、Rer1欠損マウスの作製を試みた。その結果、Rer1欠損マウスが胎生致死となることが明らかとなった。そこで、マウス初期胚発生過程におけるRer1の役割について解析を行い、Rer1が着床直後の胚発生に機能することが分かった。また、Rer1の欠損によって生じる初期胚発生異常の分子機構を解明するために、Rer1欠損ES細胞を樹立し、初期分化におけるRer1の役割を解析した。さらに、高次脳機能におけるRer1の役割を解明するために、大脳特異的Rer1欠損マウスを作製した。本研究から、Rer1がマウス初期胚発生過程や正常な高次脳機能の維持に必須の役割を果たすことを明らにし、ゴルジ体品質管理機構の哺乳動物における生物学的重要性を示すことができた。
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Dev Cell.
巻: 39(1) ページ: 116-130
10.1016/j.devcel.2016.09.001.