研究実績の概要 |
これまでに、当教室ではALSマウスとしてJAX社から購入したB6.Cg-Tg(SOD1-G93AGur/J)マウス(S群)を利用しており、同時にケラタン硫酸(KSPG)合成酵素であるGlcNac6ST-1遺伝子を欠損させたKSPG欠損型ALSマウス(SG群)も利用している。ALS発病時に活性化したミクログリア上にKSPGが優先的に発現みられたことや、SGマウスにおける発病時期が有意に早期化していたことを、研究者らはこれまでに報告してきた(Hirano K, Kobayashi K et al. PLoS One 2013)。しかしこれまでにKSPGが病期を早期化させるメカニズムは明らかになっておらず、phenotypeの検討および発病に関わる遺伝子の同定を行った。 両群マウスにおけるLifespanの差(約1週間)は、Rota-rodを用いた運動機能評価で差は無く、疾患onsetの差によるものであった。 24週齢のS群マウスとSG群マウス脊髄を用いたDNAマイクロアレイにより、主要ケモカイン(24種)のうちCCL2,CCL3,CCL4,CCL5,CCL7,CCL12を同定した。さらに、候補遺伝子に対する特異的プライマーを用いてPCRで解析したところ、KSPG発現に関してCCL5(別名:Rantes)の関与が示された。 ケモカインは、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現する塩基性タンパク質であり、白血球などの遊走を引き起こし炎症の形成に関与する。KSPG存在によるGAG bindingに関して、Rantes(CCL5)が、ALS発病に関与していると考えられた。
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