研究課題
TNF-alpha等のデスレセプターを介する刺激では、細胞の生存を促すNF-kappaBシグナル活性化に加え、細胞死を誘発する相反したシグナルが伝達される。これまでに新規タンパク質翻訳後修飾である直鎖状ポリユビキチン鎖を特異的に生成するLUBACユビキチンリガーゼは、TNF-alpha下流でのNF-kappaBシグナル活性化に関与することが明らかとなっているが、細胞死制御におけるLUBACの関与は不明であった。LUBACの直鎖状ポリユビキチン鎖形成能を欠損した細胞を、TNF-alphaとタンパク質翻訳阻害剤であるシクロヘキシミドで処理したところ、野生型に比べ細胞死が顕著に起こること、また細胞死を惹起するタンパク質複合体の形成が顕著に亢進していることを見いだした。これらの結果はLUBACがNF-kappaB活性化非依存的に細胞死を惹起する複合体形成を抑制していることを示唆する。本研究ではLUBACの細胞死抑制機構を調べるために、LUBACを構成する全サブユニットを欠損した細胞をCRISPR/Cas9技術を用いて樹立した。LUBAC欠損細胞にレトロウイルス発現系を用いてLUBACの各種領域を欠損した変異体を入れ戻し、細胞死制御に必須なLUBACの領域を同定した。ユビキチンリガーゼは基質にユビキチン鎖を付加することで、タンパク質の機能を制御するので、同定した領域に結合するタンパク質がLUBACによる細胞死制御機構を解明する上で重要だと考え、質量分析法により結合タンパク質を探索中である。また、変異体入れ戻しの過程でLUBACの制御において新しい現象を発見したので、細胞死制御機構の解析に加えそちらも解析を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
細胞死制御に必須のLUBACの領域を同定できた。また、LUBACの制御において新しい現象を見いだしたと共にLUBACによる抗細胞死を負に制御する新しい制御機構も見いだした。
解析の過程で見いだした現象の論文化を急ぐと共に、同定したLUBACの領域に結合する細胞死制御タンパク質の同定を行う。
次年度は、同定したタンパク質の機能解析を精力的に行うのに加え、論文投稿の予算が必要となるため。
同定したタンパク質を機能解析する上で必要な試薬(抗体やsiRNAやTNF等の細胞刺激因子)に加え、論文投稿の予算、研究成果を発表する為の学会費や旅費を計上する。
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