ミクログリアはAxlおよびMerといった受容体型チロシンキナーゼとそのリガンドであるProtein S、Gas6依存的に死細胞を貪食する。この貪食機構を理解するために、種々の貪食細胞との比較を行った。その結果、腹腔常在性マクロファージや皮膚のマクロファージ、肝臓のクッパー細胞においては死細胞表面に露出されるホスファチジルセリンに結合する膜たんぱく質Tim4を貪食の際に必要としていた。一方で、チオグリコレートで誘導した腹腔のマクロファージやミクログリアはTim4を必要としていなかった。AxlやMerもProtein SやGas6を介してホスファチジルセリンを結合できるが、培養細胞を用いた実験によると、その強度はTim4と比べて大幅に弱いものであった。このことより、ミクログリアは死細胞を保持せずに貪食できることが示唆された。また、死細胞貪食時のProtein SやGas6のIC50については、培養細胞での実験と同様にTim4を発現しているマクロファージでは発現していないものに比べて低くなっていた。発生期の脳においては非常に多くの死細胞が発生し、それをミクログリアが貪食して除去していることが知られている。このような状況下では死細胞が多量にあるので感度よく保持する必要がなく、また、Protein SまたはGas6といった分子も多量に分泌されていることが考えられる。これは、上記の結果とよく合致するものであるが、ミクログリアは非常によく死細胞を貪食することから、Tim4の代替分子を用いて死細胞の貪食を行っている可能性も考えられる。
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