これまでの研究から、リソソーム膜タンパク質LAPTM4aが抗がん剤のリソソーム内隔離に関与することが示唆されており、LAPTM4aを新たな多剤耐性機構のコア因子として位置づけ、細胞内分子メカニズムや薬剤に対する基質特異性の解析を行った。以下にその結果を示す。 ① LAPTM4aはユビキチンリガーゼであるNedd4-1と結合することを明らかにした。Nedd4-1との結合は、LAPTM4aのリソソームへの輸送に必要であるが、LAPTM4aのユビキチン化がこの輸送には関与しないことも明らかとなった。② LAPTM4aは新たに、細胞内輸送分子のひとつであるEps15とそのDⅢドメインを介して相互作用することを見いだした。③ LAPTM4aはリソソームへ輸送された後、エンドソームの内部小胞に隔離され、リソソーム内で分解されることが明らかにした。④ LAPTM4aのリソソームへの輸送にESCRT複合体が関与することが明らかとなった。ただし、これは既存の多胞体様小胞内への隔離ではなく、多胞体様小胞上へのソーティングに関与することが示唆された。⑤ LAPTM4aが抗がん剤耐性に寄与しているか明らかにするため、LAPTM4a野生型およびリソソームへ正しくソーティングされない変異型を哺乳動物細胞に発現させ、抗がん剤暴露後の細胞生存率をMTTアッセイを用いて検出したが、発現前と比較して、生存率は有意に上昇したものの、野生型と変異型との間には有意差は確認できなかった。 以上の結果から、LAPTM4aの細胞内輸送分子機構については多くの新しい知見を得ることが出来たが、多剤耐性については不明な点が未だ多く残っている。今後は、薬剤耐性を引き起こすとしてよく知られているP-糖タンパク質やMRP1との相関について、より詳細な検討を行っていく予定である。
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