研究課題/領域番号 |
15K19013
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
村嶋 亜紀 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50637105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子改変マウス / 細胞増殖因子 / 中腎 / ウォルフ管 / 尿管芽 |
研究実績の概要 |
腎臓原基である尿管芽は中腎管より一対出芽し、後腎間葉との上皮-間葉相互作用によって分岐伸長する。尿管芽の位置や数の異常は先天性尿路奇形(CAKUT)の原因となり得ることが知られている。これまでの研究により、中腎上皮特異的beta-cateninノックアウト(KO)マウスが示すGDNF/Ret非依存的に形成される異所性尿管芽においては、MAPK関連シグナルのうち、c-Junが活性化していることがわかった(﨑田ら, 和歌山医学 2016年)。先の報告で尿管芽形成に関与するMAPK関連シグナル上流因子としてFGFシグナルが報告されていたため、平成28年度は前年度に引き続き、GDNF/Ret非依存的尿管芽形成におけるFgfr2の関与について解析した。具体的には、中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスのバックグラウンドに、Fgfr2遺伝子の欠損を導入した複合遺伝子KOマウスを作成し組織学的解析を行なった。その結果、複合遺伝子KOマウスの示す異所性尿管芽ではc-Junシグナルの活性化が確認された。すなわち、中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおける異所的な尿管芽の形成にFgfr2は寄与しない可能性が示唆された。この結果を受けて、GDNF/Ret非依存的にMAPK関連シグナルを活性化させる上流シグナルの候補として、BMPシグナルに着目し解析を行った。中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスの異所性尿管芽周辺間葉におけるBMPリガンドやアンタゴニスト(Gremlinなど)の発現を解析したが、対照群と比べて中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおいて特異的に発現変化を示す遺伝子の同定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおいて、BMPリガンドやアンタゴニスト(Gremlinなど)の発現を解析したが、対象群と比較して顕著に発現が変化している遺伝子を同定するには至らなかった。前年度に作成した複合遺伝子KO胚作成用の親マウスの突然死や不妊により、複合遺伝子KO胚が思うように得られず、複合遺伝子KO胚作成用親コロニーの再樹立を行ったため、研究遂行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
複合遺伝子KO胚の組織を得ることができなかったために行うことのできなかった解析を当初の研究予定に沿って行う。具体的には、中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおけるc-Junタンパク質相互作用の解析を行う。また、beta-cateninとc-Junの正常または異常尿管芽における相互作用の解析や、それぞれの下流標的遺伝子の網羅的解析を行う。これらの解析の結果を複合遺伝子KOマウスの組織学的解析結果とあわせて学術論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおいて、MAPK関連シグナル上流因子候補の探索を目的とし、BMPリガンドやアンタゴニスト(Gremlinなど)の発現を解析したが、対象群と比較して顕著に発現が変化している遺伝子を同定するには至らなかったため。また、マウスの不妊などにより、複合遺伝子KO胚が予定通りに得られず、胚を用いた解析を予定どおり行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの不妊などにより、組織が入手困難であったため遅れていた、中腎上皮特異的beta-catenin KOマウスにおけるc-Junタンパク質相互作用解析や、beta-cateninとc-Junそれぞれの下流標的遺伝子の網羅的解析を行う。そのための抗体、試薬の購入費に充てる。複合体マウスの組織学的解析結果とあわせて発表するための投稿料、学会参加費や旅費として使用する。
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