研究課題
グルコシルセラミド(GlcCer)やホスファチジルグルコシド(PG)などのグルコース化脂質は、エネルギー代謝や神経変性疾患・腎疾患の発症に関与する。本研究ではそれらの定量や新規代謝産物を探索するため、試料調製から分析過程を抜本的に見直したシステムを構築した。本年度は特に極微量に含まれるホスファチジルグルコシド(PG)の高感度・高選択な定量法を確立した。高感度質量分析計(QTRAP6500: SCIEX製)を使用した結果、リゾホスファチジルグルコシド(LPG)の測定感度を約20倍高めることができた。更にイオンモビリティーシステム(SelexION)による気相分離を導入した結果、PGとホスファチジルイノシトール(PI)を糖の違いに基づいて分離できた。応用例として、肥満モデルマウスの血清LPGとLPI群を解析した。肥満マウスの血清にて、アラキドン酸をもつLPIが1.5倍に増加していた。生体試料からPGおよびLPG関連分子を高い精度で解析できることから、PG群の発現変化を追跡できることが明らかになった(長塚靖子ら、生体の科学、2016)。グルコース化コレステロール(GlcChol)については、これまで脳での存在は未報告であったため、脳からGlcCholを精製、構造決定を行った。今日に至るまで動物における糖化ステロールは一種類しか報告されていなかったが、本システムによりGlcCholと構造が類似した一群の糖化ステロールが脳内に存在することを見出した。驚いたことに、一群の糖化ステロールは糖鎖部分ならびにステロール部分に多様性を有し、これまで未報告の新たなステロールや植物由来ステロールを有するものが存在することが明らかになった(Akiyama et al. J.Lipid Res, 2016)。
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