日本人の肝臓患者のゲノムシークエンスを行った結果、肝臓がんにおいて転写因子であるHNF4Aに複数の変異が認められることが明らかになった。機能解析を行った結果、これらの変異はZnフィンガー領域に多く認められ、核内における局在を変化させることなく、タンパク発現レベルも変化させることなしに変異が誘導されるとDNA結合能が著しく失われることが前年度の研究で明らかになっていた。
前年度に引き続き、論文投稿にむけてさらなる追加解析を行ない、Znフィンガー領域以外の変異に関しても解析を進めた。Znフィンガー領域の変異と比較するとその転写活性が完全に失われることはなかったが、転写活性に減少傾向が認められた。おそらく変異が、他の因子との結合領域に認められることから、DNAへの結合よりも他の因子との結合に影響を及ぼすことが推察される。また、他の国際プロジェクトのデータを解析し、本研究以外にも肝癌においてHNF4Aの変異が存在することが明らかになった。以上のデータを含めた論文を執筆するとともに来年度中には投稿を予定している。
これらのことからHNF4Aの発現が低下する、もしくはZnフィンガー領域に変異が誘導することでHNF4Aの機能が失われ、肝臓がんの発症が誘導される可能性が示唆された。今後は、通常の細胞に内在性の変異を誘導することでHNF4Aに誘導される変異の重要性をさらに明らかにしていく必要があると考えている。
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