本研究では、遺伝子改変マウスを用いて母体栄養の変化は胎児肝臓で小胞体ストレスを惹起し、その結果生じたエピゲノム修飾が成人後の肝機能に影響して、生活習慣病の発症リスクを高めているのではないかという仮説についての検証を行い、妊娠中の食生活改善による生活習慣病発症の分子基盤の解明を目的とする。 本年度は、胎生期での小胞体ストレス応答経路PERKの活性化が、出産後の新生仔期の生体機能にどのように影響するかを解析し、その分子機構について検討を行った。申請者らが作製した臓器特異的、薬剤依存的にPERKを活性化できる遺伝子改変マウスを用いることで、小胞体ストレスを惹起させずに、PERK経路だけを胎生期に活性化させて、無活性化群、母体のみ活性化群、母仔とも活性化群を得た。出生後の体重差が消失する新生児期において、小胞体ストレス刺激における肝臓でのPERK経路の下流遺伝子の発現解析すると、胎生期でのPERK活性化に伴ってPERK下流遺伝子の発現誘導が亢進することがわかった。マウスでの表現型のメカニズムを明らかにするために、PERK経路のみを活性化できる培養細胞の5-メチルシトシン(5mC)によるエピゲノム修飾解析を行ったところ、PERK経路活性化により脱メチル化が誘導されることが明らかになった。
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