研究実績の概要 |
肝臓の慢性疾患や癌においては従来の2D画像解析では癌細胞の3D分布や空間的な腫瘍構造を詳細に知ることが難しい。そこで本研究では、研究代表者らが確立した高解像度デジタル3D再構築法(Takashima et al, Hepatology 2015)により、肝障害時の細胆管反応や胆管癌の形態形成過程を立体的かつ定量的に解析することで、病理診断や基礎医学研究への応用に向けた基盤技術の構築を目指す。これまでに、肝前駆細胞において、Lin28bがmiR-125a/bとlet-7bを抑制することでLin28b自身の遺伝子発現および肝前駆細胞の自己増殖を制御し、胆管上皮細胞への分化を抑制していることを明らかにしている。(Takashima et al, Hepatology 2016)
肝内胆管癌は肝小葉門脈域の胆管細胞と類似した細胞からなる悪性上皮腫で、Notchシグナルにより肝細胞が胆管系細胞に分化転換することで肝内胆管癌の起源になる可能性がある。そこで肝内胆管癌モデルマウスを作製して解析した。TAA投与5週後に中心静脈域に胆管系細胞が出現し、一過的なNotchシグナルが認められたが、阻害剤でNotchシグナルを抑制すると胆管系細胞が出現しなかった。また、Notchシグナルと同時に、NotchリガンドJagged-1を発現するKupffer細胞が中心静脈域に集積した。また、クロドロン酸でKupffer細胞を除去した後でTAAを投与すると胆管系細胞の出現が著しく減少したことから、Kupffer細胞が肝細胞のNotchシグナルを活性化することで胆管系細胞へと分化転換させていることがわかった。また、クロドロン酸とTAAを同時投与した結果、Kupffer細胞はアポトーシスを抑制することがわかった。(Terada et al, Sci Rep 2016)
|