研究課題/領域番号 |
15K19031
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
蒲池 史卓 東京理科大学, 理工学部, 助教 (00747800)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ST2 |
研究実績の概要 |
本研究では、IL-1受容体ファミリーに属するST2が多発性硬化症等の自己免疫疾患や癌疾患の治療標的分子となりうるかを明らかにすることを目的とする。まず、正常マウスと多発性硬化症モデルマウスのリンパ節や脊髄中においてST2を発現する細胞を調べたところ、CD4陽性T細胞の一部がST2を発現することが分かった。多発性硬化症モデルの病態形成には、ナイーブT細胞の活性化、活性化T細胞の中枢神経系への移行、中枢神経系における神経損傷という段階があると考えられる。そこで、各ステップに期間を限定して抗ST2ブロッキング抗体を投与したところ、活性化T細胞の中枢神経系への移行の段階でST2が働くことを示唆する結果を得た。また、IL-33以外のST2のリガンドを同定するため、IL-33欠損マウス由来の各種臓器のライセートでマスト細胞を刺激したところ、ある組織のライセートに反応する、すなわちリガンドが含まれていることがわかった。以上の結果から、ST2は多発性硬化症等の自己免疫疾患の治療標的となる可能性がある。今後、新規リガンドの同定を目指すとともに、多発性硬化症の発症と病態形成にST2陽性T細胞がどのように関与しているかをさらに解析したいと考えている。また、ST2が癌疾患の治療標的分子になりうるかを明らかにするため、所属研究室で着目している、肥満にともなう肝臓癌の病態形成におけるST2の役割を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究結果から、ST2の機能を阻害することで多発性硬化症の治療につながる可能性があることを示すことができた。また、IL-33以外の新規リガンドが存在する臓器を絞れた点や、機序解明のためにST2を発現するCD4陽性T細胞を標的とすれば良いことを明らかにできた点から、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多発性硬化症におけるST2発現T細胞の機能解析を進めるとともに、癌の発症や進行においてもST2が関与するかどうかを各種遺伝子改変マウスや抗ST2抗体を使用して調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想より旅費を抑えられたため、物品購入に使用させていただきましたが、上記の金額を繰り越すことになりました。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度も、実験動物や試薬等を購入する必要性が高くなると予想されるため、物品費として使用する予定です。
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