研究実績の概要 |
生理活性脂質ロイコトリエンB4(LTB4)の高親和性受容体であるBLT1は、好中球やマクロファージに発現し、炎症反応惹起に重要である。本研究では、①免疫応答の司令塔である「樹状細胞」と、②炎症・免疫応答の重要な担い手である「好中球」に着目し、LTB4-BLT1経路の機能解析を行う。本研究は、以上の研究を遂行することで、LTB4と炎症・免疫応答の関わりを明らかにし、その受容体BLT1を炎症・免疫疾患の新規創薬標的として提起することを目標としている。本年度は、樹状細胞または好中球特異的BLT1コンディショナルKOマウスを作製するため、floxマウスからNeomycin cassetteを抜き、FLPe遺伝子も抜くことに成功した。マウス飼育施設における感染事故によってコンディショナルKOマウスの作製が一定期間遅れたものの、得られた完成型BLT1floxマウスをCD11c-Cre、LysM-Creと交配して現在仔マウスを得ている。一方で、好中球の解析から、BLT1が最終糖化産物受容体RAGEと相互作用し、機能制御を受けることを世界で初めて見出した(Ichiki, Koga, FASEB J, 2016, Ichiki, Koga, DNA Cell Biol, 2016)。さらに、BLT1の詳細な機能解析のために抗FLAG抗体のヒトキメラ化も行った(Ikeda, Koga, BBRC, 2017)。また、炎症・免疫反応におけるBLT1の役割を解析する目的で行った肺炎球菌毒素投与実験で、BLT1 KOマウスでは表現型が見られなかったものの、LTB4第二受容体であるBLT2 KOマウスで生存率が著しく低くなるという表現型を見出した(Shigematsu, Koga, Sci Rep, 2016)。本研究よりRAGE-BLT1相互作用が炎症・免疫疾患の新規創薬標的となる可能性が示された。
|