研究課題/領域番号 |
15K19035
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
伊藤 雅方 東邦大学, 医学部, 講師 (20459811)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NASH / 脂肪蓄積 / 肝臓 / 炎症 / リン脂質 / ホスファチジルコリン |
研究実績の概要 |
脂質転移タンパク質であるSteroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer domain containg 10(STARD10)が抗炎症作用を有するという仮説の検証を目的として研究を進めている。これまでにStard10遺伝子のノックアウト(Stard10-/-)マウスを用い、高脂肪食負荷による脂肪肝や血清脂質の増加の程度が野生型マウスに比較して低いことを明らかにしてきた。今回、Stard10-/-マウスに非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)誘導用のコリン欠乏メチオニン減量高脂肪飼料を与え、その影響を野生型マウスと比較した。その結果、NASH誘導による肝臓への脂肪蓄積や肝臓での炎症関連遺伝子(IL-1β及びTNF-α)の遺伝子発現上昇の程度は野生型マウスに比べ、Stard10-/-マウスで有意に低かった。よってSTARD10は肝臓の脂肪蓄積を促進する作用があり、そのことで炎症を促進する可能性が考えられた。リゾホスファチジルコリンからホスファリジルコリンを生合成するlysophosphatidylcholine acyltransferase (LPCAT)は脂肪滴やリポタンパク質産生に重要な役割を果たしている。そこで、STARD10がLPCAT1と協調してはたらき、脂肪蓄積に関与する可能性を考え、LPCAT1とSTARD10の相互作用を株化細胞を用いたPull―down assayにより検討した。その結果、LPCAT1とSTARD10の相互作用が認められた。この相互作用が肝臓におけるリポタンパク質の放出や脂肪滴生成の促進に寄与すると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は脂質転移タンパク質であるSteroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer domain containg 10(STARD10)が抗炎症作用を有するという仮説の検証を目的として研究を進めてきた。これまでに、STARD10のノックアウトマウス(Stard10-/-)を用いた検討を行い、STARD10が肝臓の脂肪蓄積を促進する作用があり、そのことで炎症を促進する可能性を見出した。またリゾホスファチジルコリンからホスファリジルコリンを生合成するlysophosphatidylcholine acyltransferase (LPCAT)1との相互作用を確認し、その分子メカニズムの一端まで明らかにすることが出来た。そのため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
脂質転移タンパク質であるSteroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer domain containg 10(STARD10)とリゾホスファチジルコリンからホスファリジルコリンを生合成するlysophosphatidylcholine acyltransferase (LPCAT)1の相互作用が認められたことから、LPCAT1が生合成したホスファリジルコリンをSTARD10が転移する役割を果たすことが予想される。そこでSTARD10が結合するホスファリジルコリンの分子種を共免疫沈降法などを用い確定することで、さらに詳細な脂質転移タンパク質による脂肪蓄積の分子機構を明らかにしたい。また、Stard10遺伝子のノックアウト(Stard10-/-)マウスの肝臓において遺伝子発現が低下している遺伝子のうち、脂肪滴形成に関与する可能性のある遺伝子がSTARD10の肝臓への脂肪蓄積の促進に関与していると考えられる。すでにその候補となる遺伝子を同定しており、今後その遺伝子の培養細胞への導入による脂肪蓄積の効果をSTARD10の発現との関連を含めて解析することで、脂肪蓄積の分子機構を解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用し、未使用額は少額であった。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は少額であったため、当初の次年度の計画に合わせて使用する。
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