研究実績の概要 |
本研究では、アルツハイマー病病理進行における酸化ストレス・及び酸化ストレス防御機構であるグルタチオンの影響を調べることを目的としている。初年度は主に、グルタチオン量低下マウスの作製に尽力した。グルタチオン量低下マウスは、グルタチオン合成酵素であるグルタミルシステインリガーゼを構成する2つのサブユニット(GCLC, GCLM)のノックアウトによって作製した。GCLC, GCLMノックアウトマウスの作製はCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いて行った。実際、作製したマウスを解析した結果、目的の遺伝子配列の破壊を確認し、ノックアウトマウスの作製に成功した。また、GCLC及びGCLMのタンパク質量の減少、グルタチオン量の減少がみとめられた。さらに、これらのノックアウトマウスをADモデルマウスであるAPP-ノックインマウスと交配し、現在、病理解析の段階に進んでいる。 研究計画で予定をしていたAPPノックインマウスを用いたレドックスプロテオミクスについては、今年度は進められなかった。 一方、APPノックインマウスにおけるグルタチオン量を解析し、その結果、APPノックインマウスではグルタチオン量の減少することを発見した。グルタチオン量の減少は、実際のアルツハイマー病患者でも見られる現象である。さらに。APPノックインマウスにおけるグルタチオン量の減少は、GCLCのタンパク質量の減少に起因することもわかった。そこで、現在はAPPノックインマウスでGCLCタンパク質量が減少するメカニズムの解析を行っており、今年度も解析を続ける予定である。
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