研究課題
食道扁平上皮癌において高頻度に遺伝子増幅により活性化しているSOX2が、癌促進的に働くメカニズムについて検討を行った。これまでに食道扁平上皮癌臨床検体において、SOX2の発現亢進とリン酸化AKTの発現は正の相関を認めることを明らかにした。本研究においては、SOX2がAKT-mTOR経路を亢進させる機序を明らかにすることを目的とした。まず、SOX2はPTENの発現抑制を介してAKT経路を亢進させることを見出した。miRNAの生成をDICERのノックダウンで行うと、SOX2の発現は変化しないもののPTENの発現が上昇したことからSOX2増幅食道癌細胞においてはSOX2はmiRNAの発現を介してPTENを抑制していることが考えられた。そこでSOX2をノックダウンした時に変動するmiRNAを網羅的に解析した結果、miR-17-92クラスターが抑制されることを見出した。miR-17-92クラスターのうち、miR-19a-3pがダイレクトにPTENを制御していることを確認した。SOX2をノックダウンした後、miR-19a-3pを導入すると、PTENの抑制、AKT-mTOR経路の亢進、それにともなう増殖が回復し、逆にmiR-19a-3p inhibitorはSOX2高発現細胞においてPTENを増加させ、増殖を抑制した。次に、SOX2がmiR-17-92クラスターを直接制御しているかどうかをクロマチン免疫沈降法(CHIP-qPCR)を用いて検証した。miR-17-92クラスターのプロモーター領域内にはSOX2 binding motifが複数存在するが、CHIP-qPCRにおいて、いずれの領域においてもSOX2の結合は認めることはできなかった。以上の結果からSOX2は間接的にmiR-17-92 clusterの発現を上げ、AKT-mTOR経路を通じて増殖を促進していることが明らかとなった。
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