研究課題
近年多くの腫瘍でヘッジホッグシグナル伝達系の亢進が発症に関わっていることが明らかとなってきた。このシグナル伝達を標的とする分子標的薬がオーダーメイド医療として注目されており、臨床応用が始まっている薬剤も存在するが、多くの患者で副作用が強いため使用を中断せざるを得ない等問題点が多く、新たな薬剤、あるいは変異型に特化した標的薬の開発が待たれている。こうした薬剤開発や作用機序解明の基盤となる腫瘍モデルの構築を目指し、本研究ではPTCH1を疾患責任遺伝子とし、基底細胞癌、髄芽腫などの好発を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である母斑基底細胞癌症候群患者由来細胞からiPS細胞を樹立した。連結不可能匿名化されたNBCCS患者4症例に由来する線維芽細胞に4因子 (KLF4、SOX2、OCT3/4、c-MYC) を搭載したセンダイウイルスベクター感染させ、複数クローンのiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞における未分化マーカー遺伝子の発現を定量的逆転写PCRで、多能性幹細胞表面マーカーと未分化マーカーの発現を免疫組織化学染色で確認した。また、胚様体形成を介したin vitro分化多能性検定を行い三胚葉への分化を免疫組織化学染色で確認した。さらに、G-bandingによる核型解析で樹立したiPS細胞が正常核型を有していること、Sort Tandem Repeat解析によりすべて患者由来であることを確認した。また樹立したiPS細胞は患者と同じPTCH1遺伝子変異を保持していた。iPS細胞の免疫マウスの皮下への移植で形成された奇形腫には髄芽腫様組織が認められ、そのゲノムを解析したところ、PCTH1遺伝子のヘテロ接合性の消失が認められた。また、使用した症例のいくつかを対象としてPTCH1遺伝子変異部位の周辺にCRISPR/Cas9システムを使用してセカンドヒットを導入したiPS細胞を作製した。
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J Med Genet
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doi: 10.1136/jmedgenet-2016-104490