研究課題
私が注目しているIGBP1(Immunoglobulin-binding protein 1)はPP2Ac(Protein phosphatase A Catalytic unit)と結合する事で抗アポトーシス機能を果たす事が知られている。我々の先行研究にて、肺癌細胞株においてもこの結合による抗アポトーシス機能が働いている事、肺癌の外科材料に対する免疫組織化学的検討にて、肺腺癌の進行によりIGBP1のタンパク発現が上昇する事が確認されている。また、文献的に、IGBP1の発現がmicroRNAによって制御されている事が推察されている。この研究の目的は、IGBP1をターゲットとしたmicroRNAによる治療可能性を明らかにする事であった。研究の目的に記載した通り、miRNA-34bのtransgectionがIGBP1を制御し、抗腫瘍効果があることを肺癌細胞株を用いた実験により明らかにしていたが、miRNA-34bは既にMYCなどいくつかの癌関連遺伝子と関連している事が分かっている有名なmicroRNAであり、IGBP1との関連は薄い可能性があった。しかし、研究を進めてい行くに連れ、IGBP1を制御するその他のmicroRNA、具体的にはmiRNA-3941にも抗腫瘍効果があることが可能性を示す結果を得る事ができた。この現象に対しては、ルシフェラーゼアッセイにより、結合も確認された。本研究はXenograftマウスを用いた治療実験を目指したものであったがその過程において非常に興味深いmiRNAが見つかったため、その確認に移行した。そのおかげで、miRNA-3941という非常に興味深いmi-RNAを発見する事ができた。肺腺癌細胞株に対するmiR-3941を介したIGBP1抑制による抗腫瘍効果は、今までに報告されておらず、非常に新規性の高い発見となった。
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Cancer Science
巻: 108 ページ: 536-542
10.1111/cas.13148