平成28年度には、まず、昨年度に引き続き、高浸透圧培地もしくは通常の培地で数日間処理した細胞を、通常の培地中でコロニー形成させるアッセイを行い、高浸透圧が膠芽腫細胞のコロニー形成能に及ぼす影響を検討した。その結果、U251MG細胞株では、高浸透圧で前処理した場合にコロニー形成率の上昇が観察された。一方で、T98G細胞株では、高浸透圧による前処理はコロニー形成率に大きな影響を与えなかった。このことから、培養環境の高浸透圧のコロニー形成能への影響のしかたは、細胞株によって異なっている可能性が示唆された。次に、高浸透圧に反応して発現が上昇する分子NFAT5について、浸透圧以外の環境因子によって発現が変化するかどうか検討したところ、低酸素(1%酸素)下で培養した時に発現の上昇が起こることが明らかとなった。膠芽腫パラフィン切片を用いたNFAT5の免疫染色については、染色条件を現在検討中である。 研究期間全体を総合すると、複数の膠芽腫細胞株において高浸透圧に反応して発現が上昇する分子としてNFAT5を見出した。高浸透圧が腫瘍細胞のコロニー形成能に影響を与える可能性が示唆され、NFAT5の機能との関連も含めてさらなる検討が今後必要と考えられた。栄養因子については、グルタミン欠乏、グルコース欠乏がGINSタンパク質の発現低下に関与していることを見出し、栄養因子と腫瘍細胞の増殖能との関連について新しい知見を得ることができた。
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