まず、Sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P) 併存粘膜下層浸潤癌(CA-SSA/P) の病理組織学的特徴を明らかにすることを目的とし、CA-SSA/P 40病変の病理組織学的特徴を評価し、これを通常型腺腫併存粘膜下層浸潤癌 (CA-AD) 129病変と比較した。組織学的には両群ともに高~中分化管状腺癌が優位であったが、CA-SSA/Pでは30%の症例で粘液癌成分の併存が認められた。腫瘍径に関して、CA-SSA/P群の平均腫瘍径はCA-AD群よりも有意に小さかった。CA-SSA/Pではリンパ管侵襲が30%で認められ、CA-AD (13%) と比較して有意に高率で、同様にリンパ節転移も高率に認められた。Desmoplastic reactionは、CA-SSA/P群はlow-gradeのものが多かったが、一方CA-AD群ではhigh-gradeのものが多かった。また、CA-SSA/P群ではCrohn-like inflammatory reaction (CLR) を高頻度に認めた。結論として、SSA/P由来の大腸癌は通常の腺腫に由来する大腸癌と比較して、小さい病変だがリンパ管侵襲やリンパ節転移が高率で、粘液癌を併存することも多い。さらにSSA/P由来の大腸癌は腺腫に由来する癌と異なる病理組織学的特徴を示すと考えられた。以上の内容をVirchows Archivに報告した(Virchows Arch.2018;472:383-393)。 さらに、serrated neoplasia pathwayにおけるG蛋白共役受容体経路の活性化について明らかにするために、SSA/P併存癌8病変に対し、次世代シーケンサーを用いて網羅的に遺伝子解析を行った。結果、GNAS遺伝子変異は1例も認められなかった(未発表)。
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