研究課題/領域番号 |
15K19063
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
水谷 泰嘉 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10546229)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 酵素抗原法 / ホルマリン固定パラフィン包埋切片 / 形質細胞 / 病変部 |
研究実績の概要 |
酵素抗原法は、酵素やビオチンを標識した抗原をプローブとして、組織切片上の特異抗体産生細胞を可視化する免疫組織化学法である。本技法はパラホルムアルデヒド(PFA)固定後凍結切片に応用可能であるが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片では適用が困難である。FFPE切片への酵素抗原法の応用を最終的な目標として、本年度は、FFPE切片作製過程における組織内抗体の失活要因を検証した。 四肢足底部にhorseradish peroxidase(HRP)を免疫したラットの腋窩、膝下、鼠蹊部のリンパ節を採取した。各リンパ節を半割して、PFA固定後凍結切片を作製して抗体活性のベンチマークとした。残りの組織はホルマリン固定した後、1:凍結切片とするもの、2:エタノール脱水後、凍結切片とするもの、3:エタノール脱水後にキシレン透徹し、再度エタノール処理して凍結切片とするもの、4:加熱処理後に凍結切片とするもの、5:FFPE切片とするものに分けた。各処理組織切片について、形質細胞あたりの抗HRP抗体産生細胞の陽性率を算出して、対応するPFA固定後凍結切片に対する各処理組織における陽性細胞の残存率を抗体活性の指標として、各種処理の影響を評価した。 その結果、ホルマリン固定により抗体活性は約50%低下し、エタノール処理を加えるとさらに20%低下した。エタノール処理後のキシレン処理では活性低下は見られなかった。パラフィン包埋すると、ほぼ完全に抗体が失活した。一方、ホルマリン固定後に加熱処理した組織では、残存率が上昇した。 以上から、FFPE切片作製過程において、ホルマリン固定とパラフィン包埋処理が抗体失活の主因となることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたホルマリン固定パラフィン包埋作製工程における抗体失活要因の検証はHRP免疫ラットモデルに関して完了している。しかし、予定していたbovine serum albumin, ovalbumin, keyhole limpet hemocyaninを用いた検討および抗体活性を保持するための包埋法の検索は未完了である。
|
今後の研究の推進方策 |
HRP以外の抗原の場合でも、同様にホルマリン固定とパラフィン包埋が抗体失活の主因として作用するのか検証する。それとともに、低融点パラフィンの他、パラフィン以外の包埋剤の有効性を検証する。さらに、増感法を利用した酵素抗原法の適用も検討する予定である。有効な手法が見いだせれば、臨床標本にも応用してみる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、備品として初年度にディープフリーザーを購入する予定があったが、それを中止したこと、実施予定だった固定法検索ための動物実験が実施できなかったことおよび旅費を使用しなかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度に実施できなかった動物実験を実施するとともに、翌年度に予定している研究の実施に使用する。
|