研究実績の概要 |
本研究は、酵素抗原法のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片への応用を目的とする。酵素抗原法は、酵素やビオチンで標識した抗原をプローブとして、組織切片上の特異抗体産生細胞を可視化する免疫組織化学法である。FFPE切片では抗体が失活するため、本技法をFFPE切片へ適用することは難しい。昨年度はFFPE切片作製過程においてホルマリン固定とパラフィン包埋が抗体失活の主因となることを明らかにした。本年度は、ホルマリン以外の固定法を用いた場合について、パラフィン包埋が抗体活性におよぼす影響を検証した。 四肢足底部にhorseradish peroxidase(HRP)を免疫したラットより、膝窩、腋窩、鼠蹊部のリンパ節を採取した。AMeX(Acetone, Methyl-benzoate, Xylene)、carnoy、アセトン、エタノール、carbodiimide、periodate lysine paraformaldehyde(PLP)、PLP-AMeX、Zamboni、中性緩衝ホルマリンの各固定法で組織を固定後、凍結切片およびパラフィン包埋切片を作製した。蛋白架橋形成を固定機序とする固定法について、低融点パラフィン包埋切片も検証した。各組織切片に対してHRPをプローブとした酵素抗原法を行って、抗HRP抗体産生細胞の染色性を比較した。凍結切片では、carnoy以外の固定法において良好な染色性が確認された。パラフィン切片では、AMeX、エタノールおよびアセトンで良好な染色性が確認された。他の固定法ではパラフィン包埋によって染色性が低下した。低融点パラフィン切片では、PLPおよび中性緩衝ホルマリンにおいて、パラフィン切片よりも良好な染色性が確認された。 以上から、パラフィン切片における酵素抗原法の成否には、固定液とパラフィンの種類の組み合せが重要であることが示唆された。
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