研究課題/領域番号 |
15K19065
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
吉田 朗彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肉腫 / 疾病分類 / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
①国立がん研究センター中央病院病理科に保存されている小円形細胞肉腫アーカイブを、「分類不能」と考えられた症例を中心として、臨床病理学的に再検討した。 ②この再検討の過程において、近年特徴づけられたCIC融合遺伝子を有する肉腫やBCOR-CCNB3融合遺伝子を有する肉腫を多数例同定した。CIC融合遺伝子を有する肉腫20例のコホートについては詳細な臨床病理学的解析を行い、EWSR1融合遺伝子を有する古典的なEwing肉腫と比較した。その結果、発生部位(CIC肉腫に骨原発例がない)や予後(CIC肉腫のほうが予後不良)において有意差が認められた。形態的には分葉状増殖、軽度の多形、粘液変性などがCIC肉腫に特徴的で、WT1やNKX2.2など鑑別診断に有用な診断マーカーも同定した。上記よりCIC肉腫はEwing肉腫とは異なる独立した疾患であることを明らかにした。BCOR-CCNB3融合遺伝子を有する肉腫についても、現在その臨床病理学的特徴を解析中である。 ③本研究開始時には知られていなかった肉腫の新規亜型として、ごく最近SMARCA4変異を伴う未分化肉腫の一群が報告された(Le Loarer et al. Nat Genet. 2015)。これを受けて、本研究開始時に分類不能と判断していた症例すべてにおいてSMARCA4免疫染色を行ったところ、SMARCA4の染色性消失を伴うこの新規亜型に合致する症例を複数同定した。現在同様の症例をさらに集積して変異検索も加え、SMARCA4変異型未分化肉腫の臨床病理学的解析を実施中である。 ④上記腫瘍群を除外した分類不能小円形細胞肉腫症例については、凍結検体を入手しえた4例についてRNAシーケンス解析を実施したところ、うち2例について予期せぬほぼ同一の融合遺伝子を検出しえ、この融合遺伝子はRT-PCRでも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①分類不能症例の診断再検討は、予定通り完了した。 ②この過程で同定されたCIC融合肉腫やBCOR-CCNB3肉腫については、順調に臨床病理学的解析を進め、うちCIC肉腫については順調に論文発表した。 ③本研究開始後新たにSMARCA4変異を伴う未分化肉腫という概念が報告されるという予期せぬ展開があり、当初分類不能と考えた症例の一部はこの亜型に回収された。このサブグループについても別途臨床病理学的解析の対象とすることとした。 ④上記3亜型を除外した真の分類不能症例の一部についてはRNAseqを行いうち2例についてはほぼ同一の融合遺伝子を検出した。
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今後の研究の推進方策 |
①BCOR-CCNB3融合遺伝子を有する肉腫およびSMARCA4変異を有する肉腫のコホートについては、臨床病理学的解析を継続する。 ②RNAseqを行った4例のうち、融合遺伝子の見つかった2例については、この融合を検出するためのFISHプローブを作成し、FISH法での検出が可能か試みる。またこの2例と組織像や免疫形質が類似する症例が他に数例あるが、これらについてはFFPEサンプルしか入手できないため、FISH法やFFPE検体からの次世代シーケンス解析にて同様の融合遺伝子が検出可能かどうか試みる。 ③有望な融合遺伝子の見つからなかった2例のうち、1例は非腫瘍部の凍結検体が保存されておらず、これ以上の検索は困難と判断した。残り1例については非腫瘍部の凍結検体も入手しえたため、全エクソームや全ゲノム解析が可能かどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主としてRNAシーケンスのための初期費用として予算を計上したが、シーケンス費用自体が別の適切な研究費の枠組みで供出可能であったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
RNAseqにて融合遺伝子の検出された症例において、FISHでの融合検出のためのFISH新規プローブ作成や、FFPEサンプルからのNGS解析による融合遺伝子同定のために、翌年度請求額とあわせて使用する予定である。
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