研究実績の概要 |
昨年度までに、SMARCA4変異と発現消失を伴う胸部肉腫や、FISH偽陰性となるCIC-DUX4融合肉腫の研究を実施し論文発表したが、今年度は下記の研究を行った。 ①BCORやCCNB3の免疫染色、BCOR-FISH解析を用いて、当院の分類不能肉腫コホート中におけるBCOR関連肉腫の探索を行った結果、BCOR-CCNB3融合陽性肉腫15例を同定したほか、遺伝子異常の明らかでないBCOR過剰発現を伴う肉腫を複数同定した。これらの臨床病理像や遺伝子的背景について、RNAseqを含め解析中である。②分類不能小円形細胞肉腫8例においてFFPEからのRNAseqを施行し、3例において新規融合遺伝子を同定した。新規疾患単位の可能性があり、現在類似症例の探索を進めている。③小円形細胞型の富細胞性亜型を含む骨外性粘液性軟骨肉腫の新規マーカーとしてINSM1を同定した。感度・特異度ともに比較的良好で、遺伝子検索困難な状況では診断に有用な可能性が示唆された(Yoshida, Mod Pathol. 2018)。④スペインの研究者グループと共同で、366例の典型的ユーイング肉腫組織を用いて、既知バイオマーカー(NKX2.2, ETV4, BCOR)の診断的有効性の妥当性確認を行った(Machado, Pathol Res Pract. 2017)。⑤スペインの研究グループから提供された分類不能小円形細胞肉腫41例に新規バイオマーカーや遺伝子検索を用いた検討を加え、その一部を稀な疾患単位(EWSR1-NFATC2肉腫やCIC-DUX4肉腫など)に分類するとともに、やはり分類不能となる腫瘍群を同定した(Machado, Ann Diagn Pathol. 2017)。⑥骨軟骨腫内に発生した1cm大未満の間葉型軟骨肉腫を症例報告した(Toki, Hum Pathol. 2018)。
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