研究実績の概要 |
Innate lymphoid cells(ILCs)は、多様なサブセットを有するヘルパーT細胞および細胞障害性T細胞機能を包含するような、新たなリンパ球系細胞群として、その存在が最近明らかになった。しかし腫瘍免疫におけるILCsの役割は未だ十分に解明されていない。本研究では、難治がん膵がんを対象とし、ILCsの腫瘍免疫における意義・役割について理解を深めることを目的に、ILCsが膵がん免疫微小環境形成にどのように寄与しているのかを検討した。ILCsはNK (natural killer)細胞、ILC1, ILC2, ILC3の各細胞種について検討した。いずれの細胞も免疫組織化学により膵がん組織内での分布と浸潤細胞数をカウントして臨床病理学的に解析した。各ILCs細胞はがん組織間質でT細胞と類似の分布を呈するが浸潤数はT細胞よりも少なかった。NK細胞浸潤の多い症例は少ない症例に比して全生存・無再発生存のいずれも長いことがわかった。同様にILC1, ILC3細胞浸潤が各多い症例は各少ない症例に比して予後が良好である一方、ILC2細胞浸潤が多い症例は少ない症例に比して予後不良であることがわかった。以上の結果から、ILCs は膵がん免疫微小環境において、各細胞種と類似機能を有するT細胞と同様な役割をしていることが示唆された。
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